エロスの涙 : ジョルジュ・バタイユ | 芸術論
芸術とエロティシズムを語る上で、そしてクリエイティブとは何かを語る上で、欠かすことのできない重要な著作。
バタイユの作品を読み漁っていた1980年代には現代思潮社から1964年に刊行されたものしかなく、当時はCity Lightsから出ていた英訳本を辞書を片手に読んでいた。その後1995年に、トレヴィルから日本語訳(翻訳:樋口裕一)され、感無量の思いで予約購入した。そのような入手困難だったこの本が文庫本で出版されるなど、その当時は思ってもみなかった。
このバタイユの遺作は、彼のこれまでのエロティシズムに関する思想を集約したもので新鮮味に欠けるが、難解と言われる彼の書物としては読みやすく、図版が多く親しみやすい。ただ、そこに収められているグロテスクな幾つかの写真は、見るに堪えないものがある。そのうちの一枚、清朝中国の残虐な刑罰の写真は、アメリカのサックス奏者ジョン・ゾーンのアルバム『凌遅 LENG TCH’E』のジャケットカバーに採用されていて、バタイユの多方面にわたる影響力をうかがわせる。
先史時代から現代、ヨーロッパからアジアまで、縦横無尽に芸術とエロティシズムとについて語られているこの書物は、人間の創造力の源である「生」と「死」が数々の芸術と共演し作り上げられた奇跡的な一冊である。
エロスの涙 (ちくま学芸文庫) Georges Bataille 筑摩書房 2001-04 |
- 公式サイト
- 筑摩書房 エロスの涙
- 著者
- ジョルジュ・バタイユ
- 翻訳
- 森本 和夫
- 出版社
- 筑摩書房
- 発売日
- 2001年4月