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ブルーのセーター:映画『プラダを着た悪魔』 | 色彩

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ファッション誌の編集部を舞台にした映画『プラダを着た悪魔』の中で、青色がピックアップされるシーンがある。

「2002年にオスカー・デ・ラ・レンタがその色のソワレを
サンローランがミリタリージャケットを発表。
セルリアンは8つのコレクションに登場。
たちまちブームになり
全米のデパートや安いカジュアル服の店でも販売され
あなたがセールで購入した。」

フストリープ扮する編集長が、主人公であるハサウェイの着ていたブルーのセーターをとりあげプレタポルテと量販物との関係を話す内容は、この映画の見せ場の一つである。またこの映画には、ハサウェイがまず靴からおしゃれを始めるというシーンなど、基本を重んじる欧米文化の特徴が要所に垣間見られる。ファッションであれグラフィックであれ、欧米のクリエーターの多くは基本に忠実で、学校で教えられたとおりにことを進める。ファッションも含めてデザインには意味があり、カラー選定も例外なく、基本にそって、何らかの意味をもって決定される。一見、感覚や気分で働いているように見える彼らの仕事は、多くの場合基本という裏付けがなされている。

さて、この「青いセーター」のシーン。「流行は滝のごとく上から下へと流れる」というフランスの社会学者 J.G.タルドの言葉を踏まえて脚色したのだろう。たしかに、20世紀までは、ハイ・ファッション・カラーが多くの人たちに受け入れられてファッション・カラーとなり、それが定着してスタイル・カラーになっていた。しかし、昔と違い洋服の生産期間が各段に短くなった2000年以降、売れ筋の色はマーケットが決めるようになった。つまり、量販物は必ずしもプレタポルテからつながらなくなり、実際に市場で売れた結果をみながら投入するので、プレタポルテで提案された色が市場に出回るとは限らない。ちなみに、この映画が放映された2006年の一年前2005年に「ターコイズ」が流行りました。

とはいえ、カラー選定が重要なことにはかわりない。ストリープが映画の中で口にしていた「ターコイズ」「ラピスラズリ」「セルリアン」の色は同じ「ブルー」というカテゴリで括られるけれども、それぞれ違った色であり精神に与える影響も異なる。そして、ファッションの場合、このカラー選定でその商品の売上が(場合によっては億単位で)変わるし、グラフィックの場合もファッションと同様に、カラー選定が市場に大きな影響を与えることがある。コンピューター・グラフィックが主流となるにつれて、色見味にかんしては往々にして後回しにされがちになり、その場、その時の感覚でカラー選定をしてしまうことが多くなった。時間的な制約もあり、ついつい流しがちに仕事をしていることを反省しなければならないと思った。

生産技術が進歩し、マーケティングの手法が進化した現在、多くのブランドがマーケティングから導きだされた情報をビジネスに活用している。マーケットを意識して選び出されたトレンドカラーは、何気なく街中にあり、ブランドものの服を身に付けていなくても、トレンドカラーを意識した服を何気なく購入している。そして、生活の基にある文化自体が色彩と大きな関わりをもっていて、「神の見えざる手」で僕たちの生活を既定している。

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