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アメックスカード | 色彩

その昔、メンズウエアーのバイイングをしに行ったフィレンチェでのお昼過ぎ、ユナイテッド・アローズの重松さんが食事に行こうとおっしゃるので、三人でサバティーニへ赴いた。店内は時間も遅かったせいか比較的人も少なめでした。道路に面し窓の光が明るく入る席に案内され、重松さんおまかせで注文していただきました。お勧めのものを一通りご馳走になり、最後のスイーツも終わった後、さあ支払となった時に、重松さんが手にブラブラ持っていた巾着の中から事務用の大きなクリップで挟んだカードの束を取り出しました。そしてそのカードの束から出されたのはアメックスのゴールドカードでした。「ジャケットにクリースのしっかり入ったパンツというコンテンポラリーなスタイルに巾着」そしてその中出てきた「事務用のクリップに挟まれたカードの束」その重松さんのスタイルは文句なく粋でかっこ好かった。その時重松さんに許可を得て、巾着を持つスタイルをマネするようになった。

さて、このアメックスのカードには幾つ種類があるのか。一般的には「グリーンカード」「ゴールドカード」「プラチナカード」で、よく耳にするのが「ブラックカード」。原宿のシガーバーで働いている知人の話では、エアロスミスのスティーヴン・タイラーの支払いはブラックカードだったらしい。その他にボクが聞いたことがある色は二つ。一つは「チタンカード」。このカードを見た人の話によれば、見た目はシルバーに近いシャンパンゴールドで、日本のとある企業の会長さんが使用してたということでした。最後の一枚は、まだ話でしか聞いたことがなく実在するのかもわからないけど「クリスタルカード」というものがあるらしい。どんなカードかは、実際に見たことのある人が周りにいないのでわからない。実在するのかも疑わしい。『ウィキペディア』にも「ブラックカード」と「チタンカード」については紹介しているけど、「クリスタルカード」に関しては実在しないとある。

しかしこのアメックスのカードの配色、並べてもいい配色だとは思わないけど、色でランク付けするのに役立つかもしれない。

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色彩と文化 | 色彩

2001年にイギリスの黒人デザイナーオズワルド・ボーテング(OZWARD BOATENG)と仕事をしているときに、彼のポリシーを幾つか聞かされた。

まず一つ目は「財布を持たない」。オズワルドはトミー・ナッター(ローリングストーンズやビートルズ等のスーツを手がけた)のもとで修業をしたテーラードが得意なデザイナーで、彼の仕立てたスーツも多くのミュージシャンたちに愛用されている。確かに彼のスーツはシルエットが美しい。オズワルド自身、長身で均整のとれた体つきをしており、自分のスーツをかっこよく着こなす。そして、彼は自分のスーツを着る時にはポケットに何も入れてはいけないと言う。なぜなら、スーツのシルエットが変わるからだそうだ。なるほど、この美しいシルエットを保つためにはポケットに何も入れないほうがいいだろう。

彼自身もポケットに何も入れていない。さらに、彼の場合は鞄も持たない。荷物は荷物持ちが持つからだそうだ。彼の家はガーナー系の黒人一家だが、金持ちで、いわゆるブルジョワ階級だった。鞄は持たないけど、財布くらい持つだろう、と聞いたところ、オズワルドは財布持たないと言った。なぜなら、お金は他人に払ってもらうからだそうだ。

オズワルドのポリシー二つ目は、「白いスーツを着ない」ことだった。オズワルドのデザインしたスーツやシャツはビビッドな色が多い。それは、紫やオレンジなど発色のいい色は、彼の黒い肌によく合うからである。しかし、日本人にはこの派手な色のスーツは売れない。紺やグレー以外で遊びで着るスーツの色は生成りや白が売れる。そこで、彼に白いスーツを提案したところNGだった。なぜかと言えば、黒人が白いスーツを着ることは奴隷を意味するからだそうだ。なるほど、これまで意識したことはないが、確かにマネやピカソの絵画に出てくる奴隷は白い服を着ている。

海外でバイイングをしていると、彼らの文化や人種と日本のそれとのギャップを感じることがある。レディースのニットやカットソーをピックアップしていると、欧米人からベージュをよく勧められる。白人の女性は春夏に素肌にベージュをよく身に付けるが、彼らの出すベージュの色目は黄色人種の肌の色に近く、これを素肌に着ると一瞬、何も身に付けていないように見える。欧米でポピュラーな色が、日本では必ずしも一般的になるわけではない。計測された数値上では同じ色でも、人種や宗教、住む場所の気候などで色の見え方は大きく変わってくることもある。

文化によって色の意味合いが異なることもあるが、色の語源となると洋の東西で共通点もみられる。例えば、「赤」「red」の語源はどちらも人の血に関連している。「赤」は人身御供の儀式の様子が語源あり、「red」はサンスクリットで「血」に関連した語である「rudiras」をその語源としている。日本語の「アオ」は藍(アヰ)に由来し、英語の「blue」は古代ゲルマン語で藍色を表す「blao」を語源としている。「黒」と「black」の語源はともに燃えることに関連していて、「黒」は火を焚く場所の天井や煙突に、すすが点々とついている様子をあらわし、「black」はラテン語で火をあらわす「flamma」から派生したもので燃えかすの色を意味している。

このように色彩は人間の文化にも多種多様な影響を与え続けている。

参考文献:『色彩の世界地図』21世紀研究会編、文春新書

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ピンクの服 | 色彩

薬物乱用防止を教えるために警視庁の依頼で学校の副教材用リーフレットを制作したとき、ピンクの服を着た女の子のイラストにNGを出されたことがある。警視庁サイドでは問題なかったのだけど、文部科学省サイドで問題になったという。では、なぜ「ピンクの服を着た女の子」のイラストがNGなのかというと、このイラストは「ピンクの服=女性」をイメージさせ、このイメージがNGだという。では、男の子や男性教師のイラストにもピンクを使えばいいのかというと、どうもこれもNGらしく、その理由は教えてもらえなかった。そういえば、ピンクを女性キャラクターの色として使っていた『スーパー戦隊シリーズ』でも、一時期、女性キャラクターの色が黄色に変わっていた。

以下、ウィキペディアによる「ピンクに関する事項」から抜粋。
引用先ピンク – Wikipedia

  • 心理的に、興奮状態を落ち着かせ、緊張をほぐし、リラックスさせる色
  • 現代ではピンク色は女性に好まれ、女らしいとみなされる色
  • 無垢、子供らしさや、(他のパステル調の色と共に)春や花を暗示する色
  • 日本において性的な意味も持つ
  • カトリック教会の伝統においてピンクは喜びと幸せを表すもの
  • pinkはLSDの通称のひとつ

これを見るとピンクがNGだったのはLSDを連想させるからだったのかと思ったが、ハルシオンのことを「青玉」と言うので、これでは青色もNGになる。そうすると、おそらくは性的な意味をもつからNGだったのだろう。色彩と文化との関係は、こんな身近なところでもみられる。グローバル化された現代社会ではこの関係がさらに身近で複雑なものになってきている。

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リッチブラック | 色彩

印刷では黒に深みを増すためにリッチブラックという手法をよく使う。印刷の世界では同じ黒でも微妙な違いを表現してきた。しかし、これをモニター上で表現することは難しい。

例えば、C-40 M-40 Y-40 K-100のリッチブラックをPhotoshop CS3で設定すると、R-17 G-0 B-0になり、赤みを帯びた色になり、「ブラック」とは言い難い色になる。逆に、RGBの黒 R-0 G-0 B-0を設定すると、C-93 M-88 Y-89 K-80になる。この四色の合計すると350になるので、フィルムセッターの機種によっては受け付けてもらえないかもしれない。さらに、K-100のみの設定にした場合、RGBはそれぞれ37 30 28になり、モニター上で濁ったダークグレーに見える。

CMYKでは理論上1億以上の色数(101×101×101×101)が存在することになるが、RGB(8bit)では1677万色(256×256×256)くらいしか色数が無い。さらに、CMYKの色域とRGBの色域ではRGBのほうが大きい。すなわち、この二つは初めから相容れないもので、部分的にしか置き換えることができない。そもそも、減法混色と加法混色とでは、前者は色を加えていけば黒に近づくが、後者は白に近くなるので、その根本が全く逆である。

リッチブラックのように、WEBの世界で色出しをするときに微妙な色を表現できなくて残念に思うことが多々ある。もちろん、RGBの色域はCMYKの色域より広いので、RGBでしか出せない色も多い。けれども、最近の傾向として、印刷物の色がRGBに近づきそれを乗り越えようとしているように思える。以前はCMYKのEPS形式で入稿していた画像データを、今ではRGBのPSD形式で入稿するようになってきている。さらに、ハイデルベルグ社のSuper Fine Color 7色のように印刷でもRGBに近い色域で印刷できるようになってきている。印刷物における色の表現が広がり、WEBや映像との連携をさらに深められるようになればいいと思った。

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