毎年7月に開催される恒例の展覧会ですね。今年もどんな作品が選出されているのか楽しみです。
以下、公式サイトより抜粋
今年も、2011年5月から2012年4月までの1年間に発表されたポスター、新聞・雑誌広告、エディトリアルデザイン、パッケージ、CI・マーク&ロゴ、テレビコマーシャルなど多様なジャンルからの約8,500点の応募作品の中から、77名のADC会員によって厳正な審査が行われ、広告、グラフィック作品の最高峰ともいえるADC賞が選ばれました。ADC(正式名称:東京アートディレクターズクラブ)は、1952年の創立以来、日本の広告・デザインを牽引する活動を続けており、ADC賞は、その年の日本の広告・デザイン界の最も名誉あるものの一つとして注目を集めるものです。
ここで選び抜かれた受賞作品、優秀作品を、11月末の『ADC年鑑』(美術出版社刊)刊行に先駆け、クリエイションギャラリーG8[一般(非会員)作品]とギンザ・グラフィック・ギャラリー[会員作品]の両会場でご紹介いたします。
- 公式サイト
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- 会場
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- 会期
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- 2012年7月4日(水)~2012年7月28日(土)
- 休館日
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- 開館時間
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- 観覧料
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- 参考サイト
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中島英樹さんの作品に特徴的な余分な要素を削ぎ取ったミニマムな表紙。三つ縦に並べられたアルファベットの「O」の文字が、このシンプルなデザインに揺らぎのような小さな動きを与えている。ほぼ中央に配置された抽象絵画のような写真からは、ぼかされたフォーカスにより、DNA配列にみられるような秩序あるものの崩壊が感じとれる。
この作品は「フルアートワークCD」「パッケージレスCD」「アナログ・レコード」と三つの形態でリリースされている。その中でも「フルアートワークCD」版は、リパックトレイを使用し、DVDトールサイズの紙製パッケージに68ページにおよぶブックレットが収められている。ブックレットには、田島一成さんやラマ・リーさん、そして坂本龍一さんによる写真や北極でのネイザン・ギャラガーさんによるシューティングなど多数の写真が掲載され、曲の解説や参加アーティストの紹介など充実した内容が盛り込まれている。
ジャケットの裏面に記載されている「この商品は”カーボンオフセット”CDです。この商品が生産・流通・廃棄のプロセスで排出する/したと想定されるCO2(=1枚あたり0.87kg)は、moreTreesがフィリピン・キリノ州で取り組む植林プロジェクトによって相殺(オフセット)しています。また、日本国民1人当たりが1日に排出するCO2約6kg分全てをカーボンオフセットする費用が含まれています。」という文言は、地味ながらこの作品のコンセプトの一つを表している。
また、このアルバムは『Playing the Piano』というタイトルでセルフカバーを集めたCDとのカップリングでもリリースされており、そのジャケットデザインは『out of noise』の流れを汲んだものになっている。
世界各地で見られる戦争や紛争をはじめとした殺し合いや領土争い、共産主義諸国の崩壊やあてもなく彷徨う資本主義経済、人為的な放射能汚染など、世の中のことに対して思索を促してくれる一枚。
- Creative direction
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- Art direction and Design
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- Design assistant
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- Ny studio photos
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- London session photos
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- Other photos
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- photos
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- 参考サイト
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- 発表
- 2009年3月4日
7月9日に他界された青葉さんの『スリージーブックス 世界のグラフィックデザインシリーズ22』です。この本を眺めていると、エコロジーや平和を見つめ直し、グラフィックデザインが持つチカラを感じ取ることができます。良質のデザインで社会に訴え続けた青葉さんの作品には、影響させられることも多く、パワーを与えてくれる。
グラフィックデザイナーにとって重要な一冊。
- 著者
- 青葉 益輝
田中 一光
- 出版社
- トランスアート
- 発売日
- 1995年11月
YGエンターテイメント所属のアートディレクター:チャン・ソンウンさんによるジャケットアート。『MdN (エムディーエヌ) 2011年 05月号』でも紹介されているように、彼の作品は目を引くものが多く、K-POP躍進の一躍を担っている。
豪華さやシンボル的なグラフィックであるドクロのコンセプトのディテールから言えば『BIGBANG Special Edition』の方が勝っているけど、このキラキラ具合がチャン・ソンウンさんらしくていい。黒と銀と白のシンプルな配色がシルバーの光沢を際立たせ、ドクロのイラストをより強調する役目を果たしている。水玉やボーダーなどのシンプルな幾何学模様を効果的に扱ったブックレットも印象的。そして、背表紙と反対側の側面につけられた四つのドットと「BIGBANG」のタブがさりげないお洒落感を演出している。
現在の低迷するCDの売り上げから言えば、ジャケットデザインに資金を投入できないと考えるのが正論だと思う。しかし、制作コストを下げるために、モチベーションの下がったスタッフや基礎の出来ていない未熟な制作者を起用して安価に物事を進め、クオリティの低い作品をリリースしていては、負のスパイラルに落ちていく一方だと思う。それなりの資金を投入して質のいいものを世に出すYGエンターテイメント社の姿勢に、日本の音楽業界も見習うべきものがあるのではなかろうか。
- アートディレクション
- Seongeun Chang(チャン・ソンウン)
- 参考サイト
- BIGBANG – Wikipedia
YG Entertainment – BIGBANG
BIGBANG
- 発表
- 2011年2月25日
「TRICKY」の名前が四つに分断されたデザインが印象的なジャケットの『マクシンクェーイ』は、90年代のトリップ・ホップを代表するトリッキーのデビュー作。アルバムのタイトルは彼が4歳の時に自殺した母親の名である。
このアルバムのアートディレクションとデザインを手がけているCally(本名:Martin Callomon)は、Island Recordsのアートワーク部門Island Artに所属しているアートディレクタで、70年代にはThe bears、80年代にはThe tea setというパンクバンドのメンバーでもあった人物。Julian Copeのマネージメントもしている。
ダブの手法を大胆に取り入れたトリッキーの音楽と、彼の生い立ちを連想させる多くの写真と、Andy Earl、Paul Rider、Valerie Phillipsなど著名な写真家による彼のポートレートが入り交じったブックレットは、このアルバムに込められたメッセージをビジュアルで表現しているかのようである。「HELL IS ROUND THE CORNER 」地獄から逃れる逃亡者の物語が見えてくる、重いパンチを入れられた時に感じる痛みがいつまでも抜けないような一枚である。
- アートディレクション、デザイン
- Cally
- フォトグラフ:Tricky Shoot
- Andy Earl
Paul Rider
Valerie Phillips
- フォトグラフ:Random Shots
- Baron Von Callmeister
- 参考サイト
- Maxinquaye – Wikipedia
トリッキー – Wikipedia
- 発表
- 1995年2月20日
メンバーの脱退やリード・ボーカルのデイヴ・ガーンの薬物過剰摂取と自殺未遂など、混迷していたデペッシュ・モードの復活を決定づけたアルバムで、セールス的にも大成功をおさめた名盤。「Barrel of a Gun」「Home」「It’s No Good」「Useless」など、後に彼らの代表曲となる曲が収められている。
このアルバムのジャケットデザインはU2やデビッド・ボウイなど数多くのミュージシャンを撮影しているロック写真家アントン・コービン。彼はデペッシュ・モードのステージングやビデオなどのアートワークも数多く手掛けている。アントンが手掛けた『ultra』のカバージャケットは闇の中から力強く吹き出そうなエネルギーを連想させる。粒子の粗い岩肌の様な空間に浮かぶ「ULTRA」の文字は、まるで宇宙と交信しているかのようである。デペッシュ・モードを甦らせた底無しの力はニューチェの「権力への意思」を彷彿とさせる。このアルバムに収められた曲やアートワークは、制作に携わったメンバーやスタッフの静かな情熱が感じられる。
筆者はフィレンチェのレコード屋で購入したLPレコードを持っているが、ジャケットの裏面はアントン撮影によるメンバー三人のポートレート写真がレイアウトされている。この写真はアントンのお気に入りの一枚らしく、彼のオフィシャルサイトでは、マラケシュでの撮影された様子が綴られている。
以下、アントンのサイトより
Marrakech, 1996
With DM I have done so many photographs it is hard to choose a particular one,
but this is probably my favourite. It was shot the day before we filmed the
‘ Barrel of a Gun ’ video and we had two hours to shoot press shots and things
I wanted to use for the ‘ Ultra ’ sleeve so pretty rushed really. I was using very
grainy film and I have started to shoot with that more recently-it is muted,
not so saturated in colours.
- アートディレクション、フォトグラフ、ジャケットデザイン
- Anton Corbijn
Anton Corbijn – Wikipedia
アントン・コービン – Wikipedia
- スリーブ・デザイン
- Richard Smith
Area
- 参考サイト
- Ultra (album) – Wikipedia
Depeche Mode – Wikipedia
デペッシュ・モード – Wikipedia
- 発表
- 1997年4月14日
知人がラジオで紹介されていたから買ってみた、と言って貸してくれた。
自ら「いまでも説明するのは苦手だし下手だと実感している」という著者の語り続ける文章は、ラフな感じで親しみやすく、ノリに乗っている人の語りというものは気持ちがいい。
著者の”幸福なエラー”という言葉にも表れているとおり、この書物にはチャンスを上手く生かす例が多くみられる。この本はこれからデザイナーになろうとしている人向けの内容だけど、このことを参考にしながら、著者の背中を見ること無く、この本を糧にするといいとのではなかろうか。
『エスクワイヤー』や『スタジオ・ボイス』など良質な雑誌が消えていく中で、ボクの周りでは元気の無いデザイナーが少なくない。元気の無い印刷業界だけど、こんなデザイナーがもっと増えてくると、また活性化するのではと思った。
- 著者
- 尾原史和
- 出版社
- ミシマ社
- 参考サイト
- SOUP DESIGN
- 発売日
- 2011年1月
昨年の10月19日に発売されたこのCDのアートディレクションとデザインを手掛けました。
このデザインをする時には、前身バンド「紅麗威甦」の曲や映像を視聴して、約30年前にタイムスリップして、彼らの過去を詳しく知ることから始めました。もちろん、この依頼を受ける前から「紅麗威甦」のことは知っていたけど、昔のイメージを明確にするために過去を洗い直す作業をしました。また、アーティストとの打ち合わせの中で、過去のエピソードも聴いたり、今後の意気込みを知るとともに、初期段階でのデモ曲を聴き、その後ミックスダウンとマスタリングの様子も伺って、彼らの新しい門出の過程を体験しながら、彼らの想いを共有して形にしました。
写真は雑誌を中心に多くのタレントを撮影しているフォトグラファー伊東武志。ロケハンの時には、ボクが古い情報を伝えてしまい、伊東氏には迷惑をかけてしまったこともあります。そんなボクのミスを消し去るかのように、ロック好きな彼の感性が、紅麗威の魅力を引き立て、大人のロックを連想させる写真を撮ることができました。この場をかりてお礼申し上げます。
制作過程では、紅麗威オフィシャルブログにあるように、彼らの意気込みを再確認したり、アドバイスや説得など紆余曲折ありました。まさに、産みの苦しみ。その結果、メンバーの方々にも喜んでいただけるものが出来て嬉しかったです。
昨年末には「ニューイヤーズワールドロックフェスティバルin博品館劇場」にも出演し、その模様が1/9の深夜(1/10(月)AM 01:15 ~ 04:15)フジテレビ〔8ch〕で放映される。2011年、紅麗威の活躍が楽しみです。
- デザイナー
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- フォトグラファー
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- 参考サイト
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- 発表
- 2010年10月19日
ニルヴァーナのセカンド・アルバムで、曲も素晴らしいけど、ジャケットデザインにおいても、ロック史における最重要アルバムの一つだと思う。
スイミングをしている赤ちゃんが1ドル札に今にも喰らいつく様子は、ニルヴァーナの音楽のみならずグランジやその当時の時代性をうまく表現している。
ロバート・フィッシャーのユーモアーあふれるアイデアと、カーク・ウェドルによるすばらしい水中写真には脱帽させられる思いです。
- Artwork
- ROBERT FISHER
- Cover Photo
- Kirk Weddle
- Photography
- Michael Lavine
Michael Lavine – Wikipedia
- 参考サイト
- Nevermind – Wikipedia
- 参考サイト
- ネヴァーマインド – Wikipedia
- 発表
- 1991年9月24日
1930年に日本の総合デザイン事務所の草分け「オカ・デザインスタジオ」を設立した(設立年に関して、インターネットで調べると1935年と言われているけど、本書の著者プロフィールでは1930年となっている)岡秀行さんの著作。
CTPやインクジェットプリント、そしてデジタルカメラの普及や、広告宣伝におけるマーケティング手法の導入など、この著作が執筆された当時(1956年)と2010年の現在とでは時代背景は大きく変化しているけれど、宣伝デザインの基本的なことはこの著書が書かれた当時と変わっていないことが、この本を読むとよくわかる。
「印刷所は安くして注文をとりたいから、デザイン料はサービス位に考えて、印刷費のなかにデザイン料を含めてしまうことがあります。これではデザインの主体性も、アートディレクターの存在理由も無意味になります。出来上がった印刷物の効果などは問題のないやり方です。」
21世紀の現在になっても、「何人かのデザイナーにただ漠然とデザインさせ、そのうちの一つを」選んだり、「校正の回数をむやみと多くし、仕事のスピードを減殺してしまう」など、岡さんの危惧は解決されずに今でも平然となされている。
ブロードバンドによりインターネットがより身近なものになり、人々のライフスタイルが大きく変わろうとしている。そして、グラフィックデザイナーやアートディレクターのあり方も転換期にきているような気がする。注文主と作り手の関係もこれを機に変わってもいいのではなかろうか。
それほどページ数は多くないパッケージの章には、ル・コルビュジエの思想にインスパイアされた「容器(パッケージ)として機能を完全に消化しているものは、必ず美しい形を持っている筈です。」という言及に見られるように、のちに日本の伝統的な包装技術の収集・研究で国際的に注目された岡さんの思いが随所に込められていて勉強させられました。
2010年の今でも、アートディレクターの入門書として多くの教訓を与えてくれる良書。
著者
岡秀行
出版社
美術出版社
発売日
1956年7月