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‘ジョルジュ・バタイユ’ タグのついている投稿

ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅 | 展覧会

ポール・デルヴォーPaul Delvaux)といえば、古代と近代のモチーフが交じり合った街並みや大きな瞳のセクシーな女性など、幻想的でエロティックな作風を思い浮かべるが、この展覧会はデルヴォーがシュルレアリスム以外にも、如何に古典派や印象派からも影響を受けていたか解りやすく展示されている。

今まで気付かなかったが、ポール・デルヴォーはフランスの思想家ジョルジュ・バタイユGeorges Bataille)と生まれた年が同じ1987年で、誕生日が13日しか違わない。そして、二人とも、シュルレアリスムに強く影響されながら距離を置いていたし、世界観が似ている。バタイユは「眼」を彼の思想を表す主要なメタファーとしているが、デルヴォーは「ランプ」「月」など輝いているものを女性のメタファーとしている。だから、彼の描く女性は不思議な光を放っている。また、「汽車」や「電車」は少年の心を持ったデルヴォー自身を表してる。バタイユは著書『エロスの涙』でポール・デルヴォーについて言及しているが、同じ時代を生きた二人のコラボレーション、例えば幻想的な絵本など見てみたかった。

以下、公式サイトより抜粋

この度の展覧会では、シュルレアリスム時代の代表作をはじめ、これまでほとんど紹介されることのなかった最初期の油彩画やデッサン、制作に用いたモティーフも紹介し、画家の創作の原点を探ります。日本ではおよそ10年ぶりの回顧展となります。出品作、約80点のうちおよそ半数以上が日本初公開の作品です。

公式サイト
会場
会期
  • 2012年9月12日(水)~2012年11月11日(日)
休館日
  • 月曜日(9月17日、10月8日をのぞく)
  • 9月18日(火)
  • 10月9日(火)
開館時間
  • 午前10時~午後5時(入場は4時30分まで)
観覧料
  • 一般:900円(720円)
  • 高校生・大学生:450円(360円)
  • 小学生・中学生:200円(160円)
  • ()は20人以上の団体料金
  • 未就学児および障害者手帳等をお持ちの方は無料です。
  • 市内の小・中学生は「学びのパスポート」で無料です。
  • 常設展もご覧いただけます。
参考サイト

マダム・エドワルダ 「懐古透視」 | 展覧会

特異な音と歌詞、そして演劇的なステージングで、独自の美学を表現している伝説的なロックバンド「マダム・エドワルダ」の写真展。今では知る人ぞ知る的な存在だけど、日本のロックシーンに与えた影響は計り知れない程大きい。

彼らの美しく妖しい写真を見ていると、人間の生活における美しい部分と汚らわしい部分の混在した秘儀の重要性を感じる。耽美主義者の方々必見のイベント。

以下、公式サイトより抜粋

近くの物は大きく、遠くの物は小さく見える。まるで透視画法のような時空間の変化の中で妖しく密かに息づいてきたロックバンド、それがマダム・エドワルダである。そして、今回原宿の老舗セレクトショップA STORE ROBOTの店内で行われるのは1980年の結成から30年間以上にわたり活動を続けているマダム・エドワルダの懐古透視的な幻覚的展覧会。

結成当時から現在までのマダム・エドワルダの写真を中心に、日本初のゴシックパンク秘密クラブ「クラブ・ワルプルギス」の写真などを織り交ぜて展示します。
あらゆる事象は栄枯盛衰を繰り返す。

公式サイト
会場
会期
  • 2012年2月27日(月)~2012年3月25日(日)
休館日
  • 不定休
開館時間
  • 正午~午後8時
観覧料
  • 無料
参考サイト

岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ) | 芸術

岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ) 岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ)
別冊太陽編集部

平凡社 2011-02-23
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「アバンギャルド」「対極主義」「日本の伝統」など、岡本太郎のエスプリがほどよく凝縮されている。書名『岡本太郎新世紀』からも伺われるが、彼のアバンギャルド芸術に対する取り組みは、21世紀の芸術の方向性を示唆しているように思われる。

本書に掲載されている人類学者の中沢新一の『超核の神話』は、東日本大震災で崩れた「原子力発電の安全神話」を乗り越えるうえで、参考になるのではなかろうか。その中でも「私たちは、芸術によって、核というものを越えていくことができるのではないか。技術と芸術が大きく分かれていく分岐点に立ちもどって、科学技術がつくりだすものを包摂し乗り越えていくことが、芸術の力で可能なのではないか。これは賭けです。これからの芸術が勝利するかどうかは、わかりません。しかし、できるかもしれない。いや、勝利できると、岡本太郎はこの作品で言いたかったのだと思います。ですから、『明日の神話』は、「超核」の神話です。」というくだりは興味深い。人類はこれまでの価値観を転換させて、これまでとは違ったライフスタイルを見つけなければ「肉体は吹き飛んで、生命は消えてしまう」だろう。

ジョルジュ・バタイユの『エロスの涙』に書評を寄稿していることを本書で初めて知った。豊富な美しい図版だけでも楽しめる。この一冊で岡本太郎の魅力を堪能できる良書。

出版社
平凡社
参考サイト
中沢新一 – Wikipedia
発売日
2011年2月23日

芸術新潮 2011年 03月号 | 芸術

芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌] 芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌]

新潮社 2011-02-25
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生誕100年ということで購入した岡本太郎の特集誌。この雑誌の表紙には「岡本太郎を知るための100のQ&A」とある。100の問いに答えているのは岡本太郎の秘書で、後に養女となる平野敏子の甥にあたる平野暁臣、美術手帳で『後美術論』を書いていた椹木野衣、東京国立近代美術館主任研究員の大谷省吾、以上三氏である。

平野氏の言及は彼の伯母が岡本太郎の秘書であり養女であったこともあってか、プライベートなことも随所にみられて興味深い。「酒には義理がある」という太郎の言葉やお茶目な彼の性格など、岡本太郎の人柄を知ることができる。

三氏とも岡本太郎の作品にみられるジョルジュ・バタイユの影響を語っていて、そのどれもが的をえているように思える。椹木氏も述べているように《夜》や《電撃》はおそらくバタイユの思想を念頭に入れて描かれている。また、三氏とも触れていないが、太郎の「ノン」という言葉にはバタイユの「非-知(le non-savoir)」を連想させるものがある。

この特集に「影響を受けた画家はいますか?」という問いがあり、そこにはセザンヌ、ピカソ、ダリの名があがっている。そして、その影響が作品のスタイルではなく、創造の精神やメディアを通じて芸術家としてのイメージを露出していく手法であると述べられている。岡本太郎の作品を見ると、その作品の中のパーツ、特に揺らめく光みたいな呪術的な要素の色や形にはアンドレ・マッソンの影響が見られる。

アンドレ・マッソンはエロティックな作品を多く残しているし、岡本太郎が「乗り越える」と意識してたピカソにも多くのエロティックな作品がある。ピカソの一見何でもない闘牛の絵の牛には勃起した男根が描かれている。太郎が好きだった祭りはエロティックな本来イベントだし、バタイユに強い影響を受けているわりには、太郎には、エロティックな作品が少ないように思われる。もしかしたら、それらの絵は意図的に隠されていいるのかもしれない。その真相はわからないが、岡本太郎のエロティックな作品の少なさが、彼とバタイユとの繋がりを客観的に希薄にし、二人の関係があまりクローズアップされない要因の一つになっていると思う。もちろん、バタイユの秘密結社について具体的な資料が乏しいことが、このことに大きな影響を及ぼしているのだけど。

岡本太郎にエロティックな作品が少ないのは、少ないのではなく、今、目にしている彼の作品の多くが、見る人は意識していないが、または意識されることなく、エロティックな要素を含んでいるからなのだろうか。岡本太郎自身、そのことを意識し、計算して描いていたとも考えられる。そうなると、今度は、太郎の作品のほとんどがエロティックな作品ということになる。いずれにせよ、確証もなく創造の域を越えるものではない。この問いの答えは・・・。

出版社
新潮社
参考サイト
平野暁臣 – Wikipedia
参考サイト
André Masson – Wikipedia
発売日
2011年2月25日

太陽の塔 : 岡本太郎 | オブジェ

1/350スケール 太陽の塔 ソフトビニール製塗装済み完成モデル 1/350スケール 太陽の塔 ソフトビニール製塗装済み完成モデル

海洋堂 2010-09-13
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生誕100年ということで最近よく目にする岡本太郎の代表的な作品の一つ。

幼少の頃、万博記念公園でよく遊んでいたし、中学のころは陸上部員としてこの敷地内にある陸上競技場のトラックを走ったりと、この「太陽の塔」は筆者にとって身近な存在だった。そして、その巨大な芸術作品にはオーラがあり、言葉にできない力を与えてくれる神の様な特別な存在だった。小学生のとき、自転車で国鉄(現JR)茨木駅から万博公園を目指して大通りを走っているときも、この神様に会えることを楽しみにしながら自転車をこいだ。この巨大な神様を身近に置きたくて写生もした。こうしていつしか、油絵画家を目指していた筆者にとってこの作品は「芸術の神様」となっていた。芸術家になることを諦め、ジョルジュ・バタイユに関して研究していた学生時代でも、この神様(岡本太郎の思想)がバタイユの思想とオーバーラップしている姿を見ていた。今でもこの太陽の塔が筆者にとって「芸術の神様」であることは変わらない。大阪の天王寺で生まれ、乳飲み子として過ごした茨木の家は1970年に開催された日本万国博覧会の関連で立ち退きになっており、物心付く前からこの神様に影響を受けていたようである。

リーマンズショックや大震災で日本人のライフスタイルが大きく変わろうとしている。「太陽の塔」の根底にある岡本太郎の思想は、今の日本人が目指すべき指標を与えてくれている様な気がする。この生誕100年を機に、再考してみようと思った。

デザイン
岡本太郎 – Wikipedia
参考サイト
太陽の塔 – Wikipedia
発表
1970年3月15日

村上芳正の世界展 時の扉をくぐって―― | 展覧会

エロティシズム (ジョルジュ・バタイユ著作集) エロティシズム (ジョルジュ・バタイユ著作集)
ジョルジュ・バタイユ 澁沢 龍彦

二見書房 1973-03-10
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ジョルジュ・バタイユの著作で村上芳正さんの名前は知っていたし、村上さんの耽美的な装画に興味をもち、卒論を執筆していた当時、机上に置いていたのでよく眺めていた。

書物の挿絵など、普段は印刷物として目にする絵の原画を観ると、印刷物では知ることができなかった質感や色調に驚かされることがある。原画には作り手の魂が宿っているのか、大量生産された印刷物では味わうことができない肉迫した気配を感じる。この展示会でも、そのことを体験できるだろう。

村上さんの頽廃に溢れた幻想的な作品。画集があれば、是非とも本棚に置いておきたいアーティストの一人である。

以下、公式サイトより

三島由紀夫吉行淳之介瀬戸内晴美渡辺淳一沼正三赤江瀑日影丈吉連城三紀彦……。

多くの個性派作家に愛された画家・村上芳正(昂)初の個展。

家畜人ヤプー』『戻り川心中』『暗黒のメルヘン』『四面道』など、村上芳正の代表的な原画を中心に展示。

公式サイト
村上芳正、初の個展開催決定「村上芳正の世界展 時の扉をくぐって――」 薔薇の鉄索~村上芳正の世界
会場
Gallery Oculus // オキュルスの部屋
会期
2010年11月6日(土)~2010年11月13日(土)
休館日
無休
開館時間
午前11時~午後6時半
観覧料
無料

ラスコーの壁画 : ジョルジュ・バタイユ | 芸術論

美術の教科書にも掲載されてる、有名なラスコー壁画。彼はこの著作の中でラスコ-の壁画を労働という有用な活動と結び付いた芸術の誕生の証拠として取り上げ、これらの絵の中に「動物たちを愛しながら、殺した」という先史人たちの心理を、彼独自の思想で展開している。

遊びと労働、その間に挟まれている芸術…という議論はバタイユにまかせるとして、グラフィック・デザインの役割であるヴィジュアル・コミュニケーションの視点から、この壁画を見ると面白いと思う。アンリ・ブルイユ神父みたいに「この壁画が呪術的意図(有益な活動としての芸術活動)を表わしている」としても、バタイユの言うように「ラスコ-の壁画を遊びの証拠」と見るとしても、先史人たちはヴィジュアル表現で視覚伝達していたことには変わりない。

経済や政治、教育が大きく変わろうとしている2010年。デザインやアートを社会の中でどうかかわらせていくか。、ビジュアルコミュニケーションの原点を見詰め直すうえで重要な一冊。

ラスコーの壁画 (ジョルジュ・バタイユ著作集) ラスコーの壁画 (ジョルジュ・バタイユ著作集)
出口 裕弘

二見書房 1975-01
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公式サイト
ジョルジュ・バタイユ著作集 ラスコーの壁画
著者
ジョルジュ・バタイユ
翻訳
出口 裕弘
出版社
二見書房
発売日
1975年1月