あの頃、マリー・ローランサン / 加藤和彦 : 渡邊かをる | ジャケットデザイン
あの頃,マリーローランサン 加藤和彦 ソニーレコード 1991-05-15 |
音楽やファッションの世界でニューウェイブがもてはやされていた時代に、このアルバムは発表されている。当時の肩肘張った大げさなスタイルとは裏腹に、身近でお洒落な作品をリリースした加藤和彦さんのセンスは見事だと思う。
僕の所有しているアナログレコードにはレコード盤と歌詞カードとは別に、ジャケットデザインに使用されている金子國義さんの油絵を用いたポストカードと、『ファンの皆様へ』と題された加藤和彦さんのメッセージカードが付けられている。このB5の用紙にこめられたメッセージの最後に「レコードはプライベートな楽しみだけに使ってください。音楽を愛するすべての人にお願いします。」という一文がある。良質な作品を創り出すためには、それなりの時間とお金がかかる。しかし、作品のクオリティとビジネスとは必ずしも比例しない。その上、この当時から顕著になってきた複製技術の進歩により、音楽を聴くスタイルが変化してきた。複製技術に加え、通信技術が進歩しインターネットが生活の一部となっている現在、今一度、クリエイティブな仕事の意味を考え、「クオリティ」というものが人々の生活に与える影響を見直す必要があると思う。
加藤和彦さんの海外録音3部作『パパ・ヘミングウェイ』、『うたかたのオペラ』、『ベル・エキセントリック』に続く、この『あの頃、マリー・ローランサン』というアルバムは、前作の『ベル・エキセントリック』同様、豪華な参加ミュージシャンに劣らずアートワークも豪華で、渡邊かをるさんのアートディレクションに、金子國義さんの絵画という顔ぶれ。加藤和彦さんの上質なものに対するコダワリを感じます。
明るく軽快な音楽にマッチしたオレンジ色が印象的なジャケットデザインとともに、同名の書籍『加藤和彦スタイルブック―あの頃、マリー・ローランサン』を読んで、生活を愉しみたいと思う。
- Art Director
- Designed by
-
- Kaoru Watanabe
- Hiroyasu Yoshioka
- Katsunori Hironaka
- painting by
- 参考サイト
- 発表
- 1983年