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2011 年 4 月 のアーカイブ

岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ) | 芸術

岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ) 岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ)
別冊太陽編集部

平凡社 2011-02-23
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「アバンギャルド」「対極主義」「日本の伝統」など、岡本太郎のエスプリがほどよく凝縮されている。書名『岡本太郎新世紀』からも伺われるが、彼のアバンギャルド芸術に対する取り組みは、21世紀の芸術の方向性を示唆しているように思われる。

本書に掲載されている人類学者の中沢新一の『超核の神話』は、東日本大震災で崩れた「原子力発電の安全神話」を乗り越えるうえで、参考になるのではなかろうか。その中でも「私たちは、芸術によって、核というものを越えていくことができるのではないか。技術と芸術が大きく分かれていく分岐点に立ちもどって、科学技術がつくりだすものを包摂し乗り越えていくことが、芸術の力で可能なのではないか。これは賭けです。これからの芸術が勝利するかどうかは、わかりません。しかし、できるかもしれない。いや、勝利できると、岡本太郎はこの作品で言いたかったのだと思います。ですから、『明日の神話』は、「超核」の神話です。」というくだりは興味深い。人類はこれまでの価値観を転換させて、これまでとは違ったライフスタイルを見つけなければ「肉体は吹き飛んで、生命は消えてしまう」だろう。

ジョルジュ・バタイユの『エロスの涙』に書評を寄稿していることを本書で初めて知った。豊富な美しい図版だけでも楽しめる。この一冊で岡本太郎の魅力を堪能できる良書。

出版社
平凡社
参考サイト
中沢新一 – Wikipedia
発売日
2011年2月23日

安西水丸+和田誠「 AD-LIB4 」 | 展覧会

今年で8回目になる巨匠ふたりによるコラボレーション展。

AD-LIBというまさにアドリブで描き上げるタイトルでは4回目。

増々の人気のコラボレーション展、今年もご期待下さい。

増々の人気のコラボレーション展、今年もご期待下さい。

(スペースユイのスケジュールより引用)

イラストレーター
安西水丸 – Wikipedia
和田誠 – Wikipedia
会場
スペースユイ
会期
2011年5月6日(金)~2011年5月14日(土)
休館日
日曜日
開館時間
午前11時~午後7時(最終日:午後5時迄)
カテゴリー: イベント情報 タグ: ,

芸術新潮 2011年 03月号 | 芸術

芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌] 芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌]

新潮社 2011-02-25
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生誕100年ということで購入した岡本太郎の特集誌。この雑誌の表紙には「岡本太郎を知るための100のQ&A」とある。100の問いに答えているのは岡本太郎の秘書で、後に養女となる平野敏子の甥にあたる平野暁臣、美術手帳で『後美術論』を書いていた椹木野衣、東京国立近代美術館主任研究員の大谷省吾、以上三氏である。

平野氏の言及は彼の伯母が岡本太郎の秘書であり養女であったこともあってか、プライベートなことも随所にみられて興味深い。「酒には義理がある」という太郎の言葉やお茶目な彼の性格など、岡本太郎の人柄を知ることができる。

三氏とも岡本太郎の作品にみられるジョルジュ・バタイユの影響を語っていて、そのどれもが的をえているように思える。椹木氏も述べているように《夜》や《電撃》はおそらくバタイユの思想を念頭に入れて描かれている。また、三氏とも触れていないが、太郎の「ノン」という言葉にはバタイユの「非-知(le non-savoir)」を連想させるものがある。

この特集に「影響を受けた画家はいますか?」という問いがあり、そこにはセザンヌ、ピカソ、ダリの名があがっている。そして、その影響が作品のスタイルではなく、創造の精神やメディアを通じて芸術家としてのイメージを露出していく手法であると述べられている。岡本太郎の作品を見ると、その作品の中のパーツ、特に揺らめく光みたいな呪術的な要素の色や形にはアンドレ・マッソンの影響が見られる。

アンドレ・マッソンはエロティックな作品を多く残しているし、岡本太郎が「乗り越える」と意識してたピカソにも多くのエロティックな作品がある。ピカソの一見何でもない闘牛の絵の牛には勃起した男根が描かれている。太郎が好きだった祭りはエロティックな本来イベントだし、バタイユに強い影響を受けているわりには、太郎には、エロティックな作品が少ないように思われる。もしかしたら、それらの絵は意図的に隠されていいるのかもしれない。その真相はわからないが、岡本太郎のエロティックな作品の少なさが、彼とバタイユとの繋がりを客観的に希薄にし、二人の関係があまりクローズアップされない要因の一つになっていると思う。もちろん、バタイユの秘密結社について具体的な資料が乏しいことが、このことに大きな影響を及ぼしているのだけど。

岡本太郎にエロティックな作品が少ないのは、少ないのではなく、今、目にしている彼の作品の多くが、見る人は意識していないが、または意識されることなく、エロティックな要素を含んでいるからなのだろうか。岡本太郎自身、そのことを意識し、計算して描いていたとも考えられる。そうなると、今度は、太郎の作品のほとんどがエロティックな作品ということになる。いずれにせよ、確証もなく創造の域を越えるものではない。この問いの答えは・・・。

出版社
新潮社
参考サイト
平野暁臣 – Wikipedia
参考サイト
André Masson – Wikipedia
発売日
2011年2月25日

美術手帖 2011年 03月号 | 芸術

美術手帖 2011年 03月号 [雑誌] 美術手帖 2011年 03月号 [雑誌]

美術出版社 2011-02-17
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岡本太郎:生誕100年記念特集ということで購入してみた。表紙には「明日のTAROへ名乗りを上げろ!!太郎に出会うキーワード&ガイドマップ」とあり、早速「岡本太郎ガイド&マップ」のページをめくった。

身近なところに岡本太郎の作品があったり、日本各地に彼のオブジェや絵画があったりと、このマップを見ていると岡本太郎の作品めぐりをしに足を運びたくなる。また、グッズガイドで岡本太郎の家具があることを知り、欲しい椅子があったけど、値段をみて…

こうしてページをめくっていくと「LAIBACH」のアートワークに目がとまった。おそらく、ロックが好きな人でも知る人は少ないこのバンド。何故この紙面で取り上げられているのだろうか。そんな興味をもち椹木野衣さんの『後美術論』を読んでみた。視点を変えてみると、ライバッハの活動とU2の「ZOO TV」とがこんな形で見えることに関心し、昨年がライバッハの活動30周年だったことをあらためて知らされた。

久しぶりにライバッハとU2の音源をスピーカーから流した。そして、椹木さんの著述を思い起こしながら、インターネット社会の中での芸術のあり方や活動の仕方について考えさせられた。

出版社
美術出版社
参考サイト
椹木野衣 – Wikipedia
発売日
2011年2月17日
カテゴリー: 書籍紹介 タグ: , ,