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芸術新潮 2011年 03月号 | 芸術

芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌] 芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌]

新潮社 2011-02-25
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生誕100年ということで購入した岡本太郎の特集誌。この雑誌の表紙には「岡本太郎を知るための100のQ&A」とある。100の問いに答えているのは岡本太郎の秘書で、後に養女となる平野敏子の甥にあたる平野暁臣、美術手帳で『後美術論』を書いていた椹木野衣、東京国立近代美術館主任研究員の大谷省吾、以上三氏である。

平野氏の言及は彼の伯母が岡本太郎の秘書であり養女であったこともあってか、プライベートなことも随所にみられて興味深い。「酒には義理がある」という太郎の言葉やお茶目な彼の性格など、岡本太郎の人柄を知ることができる。

三氏とも岡本太郎の作品にみられるジョルジュ・バタイユの影響を語っていて、そのどれもが的をえているように思える。椹木氏も述べているように《夜》や《電撃》はおそらくバタイユの思想を念頭に入れて描かれている。また、三氏とも触れていないが、太郎の「ノン」という言葉にはバタイユの「非-知(le non-savoir)」を連想させるものがある。

この特集に「影響を受けた画家はいますか?」という問いがあり、そこにはセザンヌ、ピカソ、ダリの名があがっている。そして、その影響が作品のスタイルではなく、創造の精神やメディアを通じて芸術家としてのイメージを露出していく手法であると述べられている。岡本太郎の作品を見ると、その作品の中のパーツ、特に揺らめく光みたいな呪術的な要素の色や形にはアンドレ・マッソンの影響が見られる。

アンドレ・マッソンはエロティックな作品を多く残しているし、岡本太郎が「乗り越える」と意識してたピカソにも多くのエロティックな作品がある。ピカソの一見何でもない闘牛の絵の牛には勃起した男根が描かれている。太郎が好きだった祭りはエロティックな本来イベントだし、バタイユに強い影響を受けているわりには、太郎には、エロティックな作品が少ないように思われる。もしかしたら、それらの絵は意図的に隠されていいるのかもしれない。その真相はわからないが、岡本太郎のエロティックな作品の少なさが、彼とバタイユとの繋がりを客観的に希薄にし、二人の関係があまりクローズアップされない要因の一つになっていると思う。もちろん、バタイユの秘密結社について具体的な資料が乏しいことが、このことに大きな影響を及ぼしているのだけど。

岡本太郎にエロティックな作品が少ないのは、少ないのではなく、今、目にしている彼の作品の多くが、見る人は意識していないが、または意識されることなく、エロティックな要素を含んでいるからなのだろうか。岡本太郎自身、そのことを意識し、計算して描いていたとも考えられる。そうなると、今度は、太郎の作品のほとんどがエロティックな作品ということになる。いずれにせよ、確証もなく創造の域を越えるものではない。この問いの答えは・・・。

出版社
新潮社
参考サイト
平野暁臣 – Wikipedia
参考サイト
André Masson – Wikipedia
発売日
2011年2月25日

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