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2010 年 3 月 のアーカイブ

エロスの涙 : ジョルジュ・バタイユ | 芸術論

芸術とエロティシズムを語る上で、そしてクリエイティブとは何かを語る上で、欠かすことのできない重要な著作。

バタイユの作品を読み漁っていた1980年代には現代思潮社から1964年に刊行されたものしかなく、当時はCity Lightsから出ていた英訳本を辞書を片手に読んでいた。その後1995年に、トレヴィルから日本語訳(翻訳:樋口裕一)され、感無量の思いで予約購入した。そのような入手困難だったこの本が文庫本で出版されるなど、その当時は思ってもみなかった。

このバタイユの遺作は、彼のこれまでのエロティシズムに関する思想を集約したもので新鮮味に欠けるが、難解と言われる彼の書物としては読みやすく、図版が多く親しみやすい。ただ、そこに収められているグロテスクな幾つかの写真は、見るに堪えないものがある。そのうちの一枚、清朝中国の残虐な刑罰の写真は、アメリカのサックス奏者ジョン・ゾーンのアルバム『凌遅 LENG TCH’E』のジャケットカバーに採用されていて、バタイユの多方面にわたる影響力をうかがわせる。

先史時代から現代、ヨーロッパからアジアまで、縦横無尽に芸術とエロティシズムとについて語られているこの書物は、人間の創造力の源である「生」と「死」が数々の芸術と共演し作り上げられた奇跡的な一冊である。

エロスの涙 (ちくま学芸文庫) エロスの涙 (ちくま学芸文庫)
Georges Bataille

筑摩書房 2001-04
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公式サイト
筑摩書房 エロスの涙
著者
ジョルジュ・バタイユ
翻訳
森本 和夫
出版社
筑摩書房
発売日
2001年4月
カテゴリー: 書籍紹介 タグ:

God Save the Queen / Sex Pistols : Jamie Reid | ジャケットデザイン

God Save the Queen God Save the Queen
Sex Pistols

EMI Import 2002-07-02
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パンクロックをイメージさせるグラフィックの代表的な作品の一つ。

ロンドン郊外のクロイドンのアートスクールを経てピストルズのグラフィックを担当していたジェイミー・リードは、25歳の時にこの作品を作っている。その後、このジャケットデザインに使われている切り張りされた文字は、パンクをイメージさせる技法として多くのグラフィックで用いられるようになる。

エリザベス女王の即位25周年に当たる1977年5月にリリースされた「未来はない~」と歌ったこの曲は、当然物議の的となるが、今ではパンクロックの代表曲の一つである。そして、2001年、イギリスの音楽雑誌『Q』によるベスト・レコードデザイン100で1位になり、2002年には女王の即位50周年に当たることから、同シングルの再リリースが決定された。

ちなみに、ジェイミー・リードの奥さんは『リヴァプールからの手紙』や『ヘルシンキ・ナポリ オールナイトロング』『ブロンド・フィスト』などに出演している女優のマージ・クラークです。

参考サイト
God Save the Queen (Sex Pistols song) – Wikipedia
アーチスト
セックス・ピストルズ – Wikipedia
デザイン
Jamie Reid – Wikipedia
発売日
1977年5月

六本木アートナイト2010 | フェスティバル

Roppongi Art Night 2009 by nobihaya.

「街の見る夢」をテーマに、六本木の街を舞台に夜通しアート楽しむ一夜限りのフェスティバルで、今回で二回目。27日(土)17:58【日没】から28日(日)5:34【日の出】までを『コアタイム』とし、この時間帯にメインとなるインスタレーションやイベントが催される予定です。

前回は火を噴く「ジャイアント・トらやん」が印象的でした。今年は体長13メートルの巨大モンスター《ビフォア・フラワー》が気になります。

※写真は昨年のものです。

オフィシャルサイト
六本木アートナイト Roppongi Art Night
会期
2010年3月27日(土)午前10時~2010年3月28日(日)午後6時
開催場所
六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
入場料
無料(但し、一部の美術館企画展およびプログラムは有料)
カテゴリー: イベント情報 タグ:

バーバリー・チェック | デザイン

洋服の世界ではコピーが多い。『ミステイク?』のMDをしていた当時、某ドメスティック・ブランドの展示会を見る機会があったので、オズワルド・ボーテングを連れて行ったことがある。彼は「ここには何でグッチやプラダがいっぱいあるんだ」と言っていた。

素材を現金で安く仕入れることで有名な某ブランドは、完璧にコピーされた商品を製造するため、海外ブランドの購入に多額の資金をつぎ込む。店頭ではどこまで完璧にコピーをしているかをコピー元のオリジナルを手にして接客することもあるらしい。しかし、多岐にわたるコレクションブランドをコピーしていると、デザインのスキルも向上してくるらしく、噂ではこのブランドのデザイナーは海外の有名ブランドに引き抜かれたらしい。

日常的にコピーされている洋服のデザイン。このことは法律的に問題ないのだろうか。日本では商品の製造販売に関して、特許法、実用新案法、意匠法、商標法と著作権法で保護されている。例えば、「&」マークはサンエー・インターナショナルが商標登録しているので「& by Dolce & Gabbana」を日本で展開出来ない。洋服のデザインの場合は意匠登録をしていれば法律で保護されるが、登録をするには手間とお金がかかるので、洋服のデザインに関して意匠登録をすることはほとんどない。しかし、「バーバリー・チェック」のように伝統的な素材の模様を意匠登録することはよくみられ、実際にバーバリー・チェックをコピーして多額の賠償金を払った会社もあるそうだ。この「バーバリー・チェック」の意匠登録は細かい部分まで登録されているらしく、地色やライン色を変えただけではダメみたいで、チェック柄の素材を仕入れる時は細心の注意をはらう。

このように普段何気なく目にする柄でもグラフィックやWEBの分野でも使ってはならないことがある。たかがチェックの柄だけれども、これで痛い目にあうこともあるということを意識しなければならない。

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ファッション画の歴史―肌か衣か : 荒俣 宏 | ファッション

ファッションを遊戯として、そのエロティシズムや反逆性を、ロココ時代から今世紀初頭のアールデコまで、200点以上の図版を掲載しながら、19世紀と20世紀を中心にコスチューム、モード、ファッションの変遷について解説している。

「裸は反体制であり、反近代のスローガンとなる。それはまた、<自然に還れ>と叫ぶフランス革命期のフィロゾーフたちの主張とも一致した。」という一節にも表れているように、この書物の中には、「フランス革命」「世界大戦」など社会情勢に左右されるファッションの歴史が要所に言及されている。

多くのグラフィックやイラストを眺めているだけでも楽しいが、「ファッションは時限付きの革命遊戯」という言葉が印象的な熟読してもためになる一冊。

ファッション画の歴史―肌か衣か ファッション画の歴史―肌か衣か

平凡社 1996-12
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公式サイト
ファッション画の歴史
著者
荒俣 宏
出版社
平凡社
発売日
1996年12月
カテゴリー: 書籍紹介 タグ:

ピースマーク : ジェラード・ホルトム | デザイン

ピースマーク : ジェラード・ホルトム

T-シャツやネックレス、バッグなどのファッションやポスターやイラストなどグラフィックのモチーフとしてよく目にするマークの一つ。

ウィキペディアによると「起源については諸説あるが、イギリスの平和団体「CND」(Campaign for Nuclear Disarmament) のためにイギリス人アーティストのジェラード・ホルトム(Gerald Holtom) が1958年にNuclear Disarmament(核軍縮)の頭文字「N」と「D」を手旗信号で(「N」の両腕を斜め45°で下ろした形と「D」の右手を上に左手を下にした形を合体させ、これを円で囲んで)表したものをデザインしたもの」とある。両手を広げて武器を持たないと誇示している姿も連想させるマークで、平和の象徴である鳩の足跡をデザインしたものはありません。ホルトム氏は著作権をあえて所有しないで、平和を願う活動に幅広く使われるている。

発案された1958年から50周年ということで2008年に、マディソン街のバーニーズニューヨークで、ステラ・マッカートニーやラグ&ボーンらデザイナー約30人によるマークにちなんだ商品をディスプレーしたり、ピースマークを自由にアレンジして公開するできるサイト「Happy Birthday Peace」を開設したりしている。

ピースマーク – Wikipedia

Gerald Holtom – Wikipedia

名称
Peace Symbol
Unicode
U+262E
文字コード(1)
☮
文字コード(2)
☮
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遠藤 亨 展 | 展覧会

オリンパスのネオン広告を手掛け国際的にも活躍する版画家でいらっしゃる遠藤 亨さんのオフセットリトグラフ展。

「SPACE&SPACE」をキーワードに創作されたその作品群には、空間に非連続性を与えるモノ(境界や壁みたいなもの)、それは映画『2001年宇宙の旅』に出てくる謎の物体「モノリス」を連想させる。それは、あたかも空間を操る思考回路をもった器官のようである。

会場
養清堂画廊
会期
2010年3月15日(月)~2010年3月27日(土)
休館日
日曜・祝日
開館時間
午前11時~午後7時(最終日:午後5時)
観覧料
入場無料
カテゴリー: イベント情報 タグ:

0.1pt罫 | デザイン

その昔、まだDTPが世に出回っていなかった時代に「表罫」「裏罫」という言葉をよく耳にしたものである。ちなみに、「表罫」とは活版印刷で最も細い線で、太さは0.1mm。「裏罫」とは0.4mm(約1pt)前後の太さの罫線のことである。

そして現在。一般に印刷可能な罫線は、0.1pt以上(約0.03mm)で、0.1pt以下の罫線は印刷物には表示されない場合がある。印刷所によっては0.2pt以上を勧められることもある。

それにしても、この0.1ptという太さというか細さ、「表罫・裏罫」の時代から見るとかなり細い。このことを戸田ツトムさんは著書『電子思考へ…』の中で「1850年代に西欧人は、機関車が、いままで見たこともないスピードで地上を疾走するのを目撃し、それに乗ったりもした。まさに科学的世界観が大きく変動しつつある真っ最中での新しい概念の出現だった。20世紀に入りロシア・アヴァンギャルドの芸術家やダダイストは自動車や飛行機によく乗り、静止する地上に捉われない新たな視角の獲得に敏感だった。新たな視覚経験と交通の身体化は密接に、そして深々と時代を支配する。電子時代は、なぜ『はじめて眼にする』現象の多くに鈍感になってしまったのか。定義上とはいえ0.1ポイントの線が印刷されたことによって人々は、歴史の中ではじめて、印刷された最も細い線を目撃したはずなのだが…。」と述べている。0.1ptという罫線の太さは、それほど凄いことだと思う。

なのに今では、0.1pt罫はなんら珍しいものではなくなった。それは生まれたときには既に、多くの人が携帯電話を使っている時代に生まれた人に、携帯電話が特別なもので無くなったことと似ている。固定電話の権利に何万ものお金を払い、ポケットベルの誕生でその利便性を体験し、移動電話(自動車電話)に驚いていた世代と彼らとでは、携帯電話を見る視点が違っても無理はない。時代の流れとともに、罫線をはじめデザインの感じ方も変化してきている。

カテゴリー: ノウハウ タグ:

電子思考へ…―デジタルデザイン、迷想の机上 : 戸田 ツトム | デザイン

造本装幀・雑誌ディレクション・CG・テレビ番組製作など多角的に活動しているグラフィックデザイナー戸田ツトムさんのデザイン論。戸田さんの作品にみられるように斬新でポストモダンな一冊。

1980年代の終わりごろ、印刷業界では手動写植から電算写植そしてDTPへと移行しつつあり、その後の「失われた10年」の時期で、DTP化が進み、写植に取って代わろうとしていた。そのような時代に戸田ツトムさんはデジタル技術をブックデザインに取り入れて、多くの素晴らしい作品を世に送り出していた。この本はコンピュータがまだ開発途上で未熟だった時期に、創作活動をしながら電子機器と戯れる様子が書くというより描かれている。

「奇妙な遠近法の空間が展開されてるモニター画面」「アイコンをポインターで操作するときの触感」など、今となっては当たり前のことで、疑問にも感じなくなった感覚が、この書物の中ではポストモダンな言説とともに開陳されている。

この著作はDTP黎明期のグラフィックデザイン界を知る重要な資料の一つである。

電子思考へ…―デジタルデザイン、迷想の机上 電子思考へ…―デジタルデザイン、迷想の机上

日本経済新聞社 2001-05
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公式サイト
デジタルデザイン、迷想の机上 – 戸田ツトム
著者
戸田 ツトム
出版社
日本経済新聞社
発売日
2001年5月
カテゴリー: 書籍紹介 タグ:

ヨ・ロ・シ・ク壱 / 紅麗威甦 : T.Eguchi | ジャケットアート

ヨ・ロ・シ・ク壱 ヨ・ロ・シ・ク壱
紅麗威甦

コロムビアミュージックエンタテインメント 2008-12-01
売り上げランキング : 70792
おすすめ平均

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横浜銀蝿の弟分「銀蝿一家」の一員としてデビューした「紅麗威甦」のファーストアルバム。四曲目の「俺達最後のRock’n Roller -Rock’n Roll我命!- 」がデビュー当時の意気込を感じさせる曲でいい。

紅麗威甦のアルバムはこれを含めて4枚リリースされているが、全て銀色のメタリック紙に印刷されていて、このキラキラ感がロックンロールのギラギラしたイメージを彷彿させる。特にことアルバムは1月に発売されることからジャケットに花札で1月を表す「松に鶴」が大胆に配置されていて、非常にインパクトのあるデザインになっている。

横浜銀蝿は2010年にデビュー30周年になる。2006年に一度だけ再結成ライブを果たした紅麗威甦も精力的に活躍してほしい。

公式サイト
コロムビアミュージックエンタテインメント | 紅麗威甦 / ヨ・ロ・シ・ク
アーチスト
紅麗威甦 – Wikipedia
デザイン
T.Eguchi
発売日
1982年1月