2009年10月に自らの命を絶った、加藤和彦さんの特集。
きたやまおさむ、高橋幸宏、小原礼、小田和正、細野晴臣、サエキけんぞう・・・親しい友人たちの特別な思いが語られているけど、中でも立花ハジメさんによる詩のような追悼文が印象的でした。サディスティック・ミカ・バンドのファーストアルバムのジャケット・デザインを手掛けた「WORKSHOP MU!!」でのエピソードが書かれていたりして、思い出話が中心だけど、ここには筆を進めることが辛そうな文面に、目に見えない悲しい心が表れている。「孤独」「不毛」「不条理」。「世の中は音楽なんて必要としていない」という遺書の一文にも見られるように、これらの言葉は、加藤和彦さんのメランコリックな作品の闇の部分を表現するキーワードとなっている。
この本に掲載されている加藤和彦さんのエッセイ『Dear an audience』に聖なるものに関する記述がある。
「二度とないもの、起こらないものにこそ、聖なるものが宿り、そこになにかが生まれる」
偶然と幸運によって成り立っている創造力が持続できなくなったとき、アーティストは悲劇的な結末を迎えざるを得ないのであろうか。
- 公式サイト
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- 出版社
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- 参考サイト
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- 発売日
- 2010年2月25日
スマートフォン用のサイトを手掛けていて、Androidに組み込まれているシステムフォント『Droid』の拙さが気になっていた。Droidの日本語フォント『Droid Sans Japanese』には、まず太文字がない。よって、コーディングでボールドを指定しても、文字の太さが変わらない。また、全角の「+」や「-」「○」などの記号が、ひらがなやカタカナ、漢字に比べて、極端に小さくなる。その昔、モリサワ社のフォント「新ゴ」は全角で数字を打つと半角幅の数字が表示されていたが、それと同じくらいバランスが良くない。
そんなことを多くの人が思っていたのかは知らないが、Android 4.0から、システムフォントが『Roboto』に変わった。この移行に伴い、日本語のフォントは『Droid Sans Japanese』からモトヤ社の書体『モトヤLシーダ3等幅』と『モトヤLマルベリ3等幅』に変わった。モトヤ社は馴染みの会社で、『アポロ』や『ステンシルアポロ』など実用的でユニークな書体があるので、これらを好んで使用している。今回Android 4.0で採用されたゴシックと丸ゴシック二つの書体も実用的だし、どこか愛嬌のあるデザインの書体なので、Android OSには似合っているかもしれない。
完成度の高いフォントによって、上質なスマートフォンサイトを制作する意欲がわき、Androidで閲覧する楽しみが増えるかもしれない。
- デザイナー
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- 参考サイト
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「紅麗威」は、この2012年に前身の「紅麗威甦」結成から30年という節目にあたるロックンロールバンドである。武道館を経験しているこのビックなバンドは、この記念すべき年に仰々しくすることなく、あえて、さりげなく装い、デンと構えている。このアルバムの表紙で用いた写真のように。
この30年間、メンバーそれぞれに様々な思いがあるだろう。そこで、まずは彼らの原点に戻って、デザインすることにした。「紅麗威甦」のオリジナルアルバムは四枚あるが、その全てが銀色の紙をベースに印刷されている。そこで、今回も銀色をベースにした。銀色をベースにする際に、銀色インクを使って燻し銀のように渋い感じに仕上げようとも思ったが、ここはストレートにオリジナルアルバム同様銀紙(銀箔)を使用した。これは、彼らのストレートなロックンロールやバラードにも通じる色だと考えたからである。煌めく銀色の中には輝かしい光が反射されるが、この閃光を静かに受け止める青い光。表紙の写真を撮った生井秀樹さんが、撮影に青いライトを用いてシャッターを押していている光景を思い出した。そして銀色を用いいる意味を再確認し、この方向が正しいことを確信した。
製品を見て、銀色インクを使わないで結果的に正解だったと思う。印刷の技術も進歩したせいか、色の階調が80年代のものとり向上した感じで、過去四枚の進化版をいった風合いに仕上がった。さらに、生井秀樹さんと伊東武志さんという優れたフォトグラファーにも恵まれ、クオリティの高い写真を使えたことにより、完成度の高いもの作りにつながった。特に、表紙に用いた写真は、「紅麗威」のメンバー三人の内面を伝えるいい絵で、銀色のベースが生える。また、トールサイズのパッケージがこの写真を引き立ててくれている。多分、CDで使われる通常のパッケージだと、この写真のインパクトは損なわれていただろう。
今回『俺達最後のロックンローラー』の制作に参加して感動させられたことは、80年代に発表された銀色が特徴である四枚のアルバムジャケットが素晴らしいものであることを再確認できたことである。T.Eguchiさんのデザイン力には関心させられ、力づけられることが多い。「紅麗威」このアルバムで多くの人たちが勇気づけられることを望む。
- デザイン
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- フォトグラフ
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- 参考サイト
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- 発売日
- 2012年1月20日
「素材美(個々の素材が潜在的に合わせ持つ色彩美や造形美)を活かすことこそデザインの極致」とオフィシャルサイトで謳われているように、オールステンレス一体構造包丁の「GLOBAL」はこのコンセプトで一気通貫されて作られている。だからGLOBAL包丁のデザインは、美しく、時代を超越している。このことは、明確なコンセプトをブレることなく成し遂げることで、上質なものを世に送ることができた成功例の一つと言える。
我が家では文化包丁とパン切りの二つを使用している。使い始めてからちょうど10年経つが、包丁の重要な機能である「切れ味」は衰えることなく、手に持った時の質感は料理をする楽しみをより豊かにしてくれる。
- デザイナー
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- 参考サイト
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- 発売日
- 1983年
昨年は東北地方太平洋沖地震があり、2012年の年賀状に「謹賀新年」や「あけましておめでとう」という言葉を書かない人も多かったと思う。逆に、沈んだ気持ちを持ち上げるために、いつもよりもお金をかけて年賀状を作った人もいる。しかし、右往左往することなく、平生の心でいることで、見えなかった現状が見えてくるものである。ここで今一度、状況を再確認しててみてはどうだろう。