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鋤田正義 / サウンドアンドヴィジョン きれい | 写真集

鋤田正義 サウンドアンドヴィジョン きれい 鋤田正義 サウンドアンドヴィジョン きれい
鋤田正義

パルコ 2012-08-24
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日本を代表する写真家である鋤田正義さんの写真集で、2012年8月に東京都写真美術館で開催された『鋤田正義展』の公式展覧会図録。

デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の『ヒーローズ(Heroes)』やYMOの『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(SOLID STATE SURVIVOR)』、土屋昌巳の『RICE MUSIC』などのジャケット写真も素晴らしいけど、メンズ・アパレル・ブランドの『JAZZ』のアートワークにも感動させられる。

映画好きである鋤田さんの写真にはドラマがある。動画のような動きはない写真に、流れるような躍動感とそのヴィジュアルに相応しい音が感じられる。この写真に生命を吹き込む術を、鋤田さんは持っている。そんな気がした。

ロックを中心に文化を愛する人にとって愛すべき一冊。

公式サイト
参考サイト
出版社
parco publishing
発売日
2012年8月

The Anvil / Visage : Helmut Newton | ジャケット写真

Anvil Bonus Tracks Anvil Bonus Tracks
Visage

One Way Records Inc 1997-08-26
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ニューロマンティックの先駆的バンドであるヴィサージVisage)の二枚目のスタジオ・アルバム。今まで、かっこいい写真だな、と思いながらこのレコードを聴いていたが、裏面のクレジットを見ると、写真はヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)が撮影していた。スティーヴ・ストレンジのインタヴューにもあるように、スティーヴ・ストレンジはヘルムート・ニュートンの写真が気にいっていたらしく、シングルカットされた『The Damned Don’t Cry』のジャケット写真も彼によるものである。

そして、ヘルムート・ニュートンの名前の下には、Presentationとしてピーター・サヴィル(Peter Saville)の名前がクレジットされており、続けて、彼の所属していたGrafica Industriaもクレジットされている。ピーター・サヴィルは彼特有のセンスでヘルムート・ニュートンの写真を最大限生かすレイアウトに心掛けているようで、このジャケットデザインには余分な要素が一切無い。しかし、精錬された空白の取り方、書体の選択やバランスはこのデザインの品格と調和を作っている。

ヘルムート・ニュートンとピーター・サヴィルという豪華な顔ぶれで作成されたこのジャケット・アート。あらためて、スティーヴ・ストレンジのこだわりと、センスの良さを実感させられた。

Photography
Presentation
Photography (Inner sleeve)
Steves’ clothes
Hair
  • Ollie At Robert Lobetta
参考サイト
発表
1982年3月

The Heart of Saturday Night / Tom Waits : Cal Schenkel | ジャケットデザイン

土曜日の夜 土曜日の夜
トム・ウェイツ

ワーナーミュージック・ジャパン 2011-01-26
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トム・ウェイツの二番目のスタジオ・アルバムで代表作。プロデューサのBones Howeがジャズ畑の人だし、Tom Scott(Wikiには何故かPete Christliebの名前がクレジットされている)がサックスで参加していたりとジャズの趣が随所に聴かれる曲が多い。

フランク・シナトラのアルバム『In the Wee Small Hours』のジャケット・デザインをベースにしたアルバムジャケットは、土曜の夜に相応しい相手を探している(「(Looking For) The Heart Of Saturday Night」)様子が描かれており、紫色のドレスを着た人が今宵の相手なのだろうか。このアルバムのアートディレクションを担当しているCal Schenkelは、このドレスやトム・ウェイツと思われる男のジャケットのタッチが気に入っているらしくフランク・ザッパの『One Size Fits All』でも、イラストレータのLyn Lascaroをソファーの生地を描くのに起用している。

筆者の所有しているLPレコードの裏側は曲のタイトルやクレジットにタイプライターの文字が使われていて、タイプライター特有の文字のばらつきと、「PRODUCTION AND SOUND BY BONES HOWE」で使用されているモダンな書体との対比が、このアルバムのノスタルジックな雰囲気を作っている。さらに、トム・ウェイツの友人Scott Smithが撮影した二枚の白黒写真がミュージシャンの日常をみせてくれていて、このミュージシャンがアルバイトをしていたNapoleone’s Pizza Houseを歌った曲など、彼の身近な出来事を連想させてくれる。

夜の街で、明け方まで静かに過ごす時に相応しい一枚。

Art Direction
Cover Illustration
  • Napoleon ( Lyn Lascaro )
Photography
  • Scott Smith
参考サイト
発表
1974年 10月

2013年春のファッションカラー | カラー

パントン社による2013年春のファッションカラーのタイトルは『The Balancing Act』。このタイトルから1970年代に活躍したロックバンドであるスーパートランプのアルバム『…Famous Last Words…』を思い出しました。勿論、このアルバムと2013年春のファッションカラーとは何の関係もないけど、このアルバムジャケットの色使いは、パントン社が提案している2013年春のファッションカラーとかぶってます。

2013年春のテーマは、綱渡りのようなバランス。鮮やかな黄緑色や灰色のヒスイ、静かな緑、洗練されたエメラルドなどの陽気な爽やかさを持った色のミックスや、アフリカバイオレットとポピーレッドや、レモンゼストとシトラスオレンジなどの威勢のいい組み合わせ。そして、ポピーレッドとリネンとモナコブルー、またはモナコブルーとエメラルドに見られる安定性と深さの両方を兼ね備えた古典的な色合い。パントンカラー研究所の理事が「光と明るさ、古典と新しいの間のバランス」と呼んでいる個性的で、自己表現と刺激をもたらすユニークな組み合わせが多い。

筆者は『…Famous Last Words…』を聴きながら書き綴っているが、このアルバムに収められた大ヒット曲「It’s Raining Again」は春の雨を連想させるいい曲だとあらためて思った。

参考サイト

Ultravox / Systems of Romance : Dennis Leigh | ジャケットデザイン

Systems of Romance Systems of Romance
Ultravox

Ume Imports 2006-08-29
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ウルトラヴォックのサードアルバムで、エレクトリック・ロックの世界に絶大な影響を与えたアルバム。

ウルトラヴォックといえば、大英帝国勲章を叙勲されたミッジ・ユーロ時代の曲が大ヒットを連発したが、初期のジョン・フォックス時代の曲を聴くと、商業的には恵まれなかったが、国内外の多くのアーティストに影響を与えていることがわかる。特にこの『Systems of Romance』の完成度は高く、音だけでなく、ジャケット・アートも素晴らしい。

筆者が所有するLPレコードのインナースリーブにはスリーブ・コンセプトとしてジョン・フォックスの名前がクレジットされているが、レイアウト・バランスやファッショナブルで芸術的なイメージ写真の周囲に施されたカラーチャートなどは、彼のグラフィックデザイナーとしての素養が感じられる。

「Quiet Men」や「Just for a Moment」など、『Systems of Romance』はウルトラヴォックの音を確立したアルバムだと思う。そして、その後のテクノやアート・ロックに引き継がれていく名作として、今後も聴き続けていきたい。

音を聴いても、ジャケットを眺めても、芸術の秋に相応しい一枚。

Sleeve Concept
Group Photography
Cover Design
  • BLOOMFIELD / TRAVIS
参考サイト
発表
1978年9月8日

ZOA / 仮想の人-The moon said that you are the moon- : Kazvnori Akita | ジャケットデザイン

仮想の人-The moon said that you are the moon- 仮想の人-The moon said that you are the moon-
Z.O.A

インディーズ・メーカー 2000-05-20
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ZOAのミニアルバム。音とカバーアートがこれほどマッチしてる作品もめずらしいと思う。プログレシッブで和洋折衷、そんな楽曲にふさわしく、秋田和徳さんがデザインした絵の中には、多種多様なモチーフが混在している。

ジャケットには炎の中に様々なモチーフが散りばめられている。水墨画のような鳥居、壁画に描かれたような観音様、琳派を思わせるユリの花、洋風の人面太陽、フラ・アンジェリコが描いたような大天使ガブリエル…。このカオス状態の表側とは裏腹に、見開いた内側は、表側で配置されていたユリの花が紙面の中心に置かれている。そこには柔らかな光がこの花を照らして、静寂さを際立たせている。表が地獄で、裏が天国を表しているのか…。

蛇腹折りのインナースリーブに目を向けると、そこにも和と洋が計画的に混在している。要所要所に用いられている篆書体。漢字と平仮名、ギャラモンと思われるアルファベットとの混在。古紙のようなマテリアル。表罫線と裏罫線とを組み合わせた囲み罫…。

ただ、音を聴いて、ジャケットを眺めるだけ…。言葉では表せない一枚。

Cover Design
参考サイト
発表
2000年5月20日

Kate Bush / The Sensual World : John Carder Bush | ジャケット写真

センシュアル・ワールド(紙ジャケット仕様) センシュアル・ワールド(紙ジャケット仕様)
ケイト・ブッシュ

EMIミュージック・ジャパン 2005-11-02
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ケイト・ブッシュの6枚目のスタジオ・アルバムで、作品のクオリティもセールス良好だった。参加したメンバーもブルガリアン・ヴォイスの三人やヴァイオリニストのナイジェル・ケネディ、そして今は亡き伝説のベーシストミック・カーンと異色のミュージシャンたちがクレジットされている。

モノクロの写真のポートレートが印象的なこの写真を撮影したのは、ケイト・ブッシュのお兄さんで作家であり写真家のJohn Carder Bush。写真家として彼の作品は多く見られないが、この『The Sensual World』のジャケット写真は素晴らしい。薔薇の花で隠されたケイト・ブッシュの口元が、彼女のセンシティブな部分を表現し、見開いた目はフランスの詩人アルチュール・ランボーのような見者の勇気を彷彿とさせる。この力強さと内に秘めた優しさは、薔薇のように美しく刺々しい。

John Carder Bushの写真に金色でアルバムタイトルとアーティスト名が上品なデザインフォントで配置されたデザインは、このとてもシンプルな構成により、このポートレートを引き立てている。これは、数多くのアルバムジャケットを手掛けているBill Smith Studioによるもので、その完成度の高さが頷ける。

Photography
Design
参考サイト
発表
1989年10月16日

Sade / Love Deluxe : Albert Watson | ジャケット写真

Love Deluxe [12 inch Analog] Love Deluxe [12 inch Analog]
Sade

Music on Vinyl 2010-07-20
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ヴォーカルであるシャーデー・アデュの甘美な写真を前面に押し出し、余分なものをそぎ落としたデザインが印象的なシャーデーの四枚目のアルバム。至高の愛に生身の体以外に何もいらないことを、このジャケットは僕たちに再認識させてくれる。

この写真を撮影したのは、スコットランド出身の写真家アルバート・ワトソン。GQ、ハーパースバザーやヴォーグなど数多くの著名な雑誌で活躍している彼のポートレート写真には、被写体の人格がおもむろに表れている。内面的に物静かな人、神秘的な人、心優しい人、快活な人、内に野心を秘めた人…。その人それぞれの内面が彼のポートレート写真を見ると伝わってくる。この『Love Deluxe』のジャケット写真も、そんな彼の写真の一枚である。

甘美的な姿に秘められた躍動感みなぎる静寂な情熱が、アルバート・ワトソンの写し撮ったシャーデー・アデュから感じられる。そして、この写真はこのアルバムに収められた曲そのものを、僕たちに目に見える形で伝えてくれている。

Photography
Design
  • Peter Brawne
参考サイト
発表
1992年11月11日

人間解体 / クラフトワーク : エル・リシツキー | ジャケットデザイン

Man Machine Man Machine
Kraftwerk

EMI Import 2003-02-11
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このアルバムのジャケットのアートワークはカール・クレフィッシュであるが、アルバムのクレジットに明記されているようにエル・リシツキーのデザイン思想に強く影響にされている。

20世紀前半に活躍したロシアの構成主義デザイナーであるエル・リシツキーはタイポグラフィーやフォトボンタージュを巧みに用いたデザインで、現代のグラフィックデザインの基礎を築いたような人物である。彼の主な作品には『赤のくさびで白を打て』や『From Two Quadrants』など、白と黒と赤の三色を用いた作品や、ペリカン・インキ社のための一連のポスターに見られるような写真を加工して作られた作品などがある。

このクラフトワークの『人間解体』のアートワークには、そのようなリシツキーのデザイン的な特徴を周到して作られている。構成主義的な斜めのレイアウト。白黒赤の三色によるカラーリング、写真は部分的に背景色の赤色やタイポグラフィで用いられている黒色と同じ色で塗られ、厳格なトーンマナーを維持させている。また、この着色により、塗られずに残された元の写真が人工的に作られた部分との対比をなし、クラフトワークの電子音楽をオーバーラップさせるかのように無機質なものと有機的なものをバランスよく表現している。

このアルバムを聴きながらジャケットを眺めていると、クラフトワークの音にリシツキーの思想が隠されているような気がして面白い。

Inspired By
Artwork
  • Karl Klefisch
Photography
  • Günter Fröhling
参考サイト
発表
1978年 5月

Rain Tree Crow : 藤原新也 | ジャケット写真

Rain Tree Crow Rain Tree Crow
Rain Tree Crow

EMI Europe Generic 2003-10-07
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真っ黒なボックス型のカバーにはシルバーの箔押しで「RAIN TREE CROW」と印字されている。この中にはプラケースに収められたCDとブックレット、そしてこれとは別に対訳付きの歌詞と、デヴィッド・シルヴィアン、藤原新也、ブロードキャスターのピーター・バラカン、プロデューサーの立川直樹、四氏によるライナーノーツが掲載されているブックレットが収められている。

『RAIN TREE CROW』は、1982年に解散したイギリスのロックバンド「ジャパン」の再結成ユニットでそのアルバム。メンバーはジャパンの最後のオリジナルアルバム『錻力の太鼓』と同メンバーだけど、何故かジャパン名義でない。その理由はこのアルバムに収められている12曲の音を聴けば、よくわかると思う。これはジャパンの音ではない。

プラケースに入れられたブックレットの表紙はセピア色の沙漠の写真で、大きく「RAIN TREE CROW」とボックス型のカバーと同じ書体で印字されている。この殺風景な写真からはイメージが付きにくい「雨」と「木」、そしてこの写真の何処にも姿が見えない「烏」という単語。このアンバランスな組み合わせに多くの人が首をかしげるかもしれない。筆者もその一人だった。しかし、ジャパンでない「RAIN TREE CROW」の音を聞けばその答えが解かる。映画『バグダッド・カフェ』の舞台でもあるこのモハーヴェ砂漠を撮影した藤原新也さんが明確にそのことを語っている。

あの私の写真の中に「RAIN TREE」が見えたのである。不思議なことだ。私はある人間の目と、そして音の創造とによって、私自身の撮った写真に対する新たな見かたを教えられたのだ。それを言葉にするというのは野暮である。

cover photography
design
art director
参考サイト
Rain Tree Crow – Wikipedia
発表
1991年4月20日