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俺達最後のロックンローラー:紅麗威 / オオニシノリアキ | ジャケットデザイン

俺達最後のロックンローラー 俺達最後のロックンローラー
紅麗威

Scream RECORDS 2012-01-20
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「紅麗威」は、この2012年に前身の「紅麗威甦」結成から30年という節目にあたるロックンロールバンドである。武道館を経験しているこのビックなバンドは、この記念すべき年に仰々しくすることなく、あえて、さりげなく装い、デンと構えている。このアルバムの表紙で用いた写真のように。

この30年間、メンバーそれぞれに様々な思いがあるだろう。そこで、まずは彼らの原点に戻って、デザインすることにした。「紅麗威甦」のオリジナルアルバムは四枚あるが、その全てが銀色の紙をベースに印刷されている。そこで、今回も銀色をベースにした。銀色をベースにする際に、銀色インクを使って燻し銀のように渋い感じに仕上げようとも思ったが、ここはストレートにオリジナルアルバム同様銀紙(銀箔)を使用した。これは、彼らのストレートなロックンロールやバラードにも通じる色だと考えたからである。煌めく銀色の中には輝かしい光が反射されるが、この閃光を静かに受け止める青い光。表紙の写真を撮った生井秀樹さんが、撮影に青いライトを用いてシャッターを押していている光景を思い出した。そして銀色を用いいる意味を再確認し、この方向が正しいことを確信した。

製品を見て、銀色インクを使わないで結果的に正解だったと思う。印刷の技術も進歩したせいか、色の階調が80年代のものとり向上した感じで、過去四枚の進化版をいった風合いに仕上がった。さらに、生井秀樹さんと伊東武志さんという優れたフォトグラファーにも恵まれ、クオリティの高い写真を使えたことにより、完成度の高いもの作りにつながった。特に、表紙に用いた写真は、「紅麗威」のメンバー三人の内面を伝えるいい絵で、銀色のベースが生える。また、トールサイズのパッケージがこの写真を引き立ててくれている。多分、CDで使われる通常のパッケージだと、この写真のインパクトは損なわれていただろう。

今回『俺達最後のロックンローラー』の制作に参加して感動させられたことは、80年代に発表された銀色が特徴である四枚のアルバムジャケットが素晴らしいものであることを再確認できたことである。T.Eguchiさんのデザイン力には関心させられ、力づけられることが多い。「紅麗威」このアルバムで多くの人たちが勇気づけられることを望む。

デザイン
フォトグラフ
参考サイト
発売日
2012年1月20日

GLOBAL包丁 / 山田 耕民 | インダストリアルデザイン

GLOBAL 三徳3点セット(三徳包丁 ペティナイフ スピードシャープナー) GST-46 GLOBAL 三徳3点セット(三徳包丁 ペティナイフ スピードシャープナー) GST-46

GLOBAL (グローバル)
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「素材美(個々の素材が潜在的に合わせ持つ色彩美や造形美)を活かすことこそデザインの極致」とオフィシャルサイトで謳われているように、オールステンレス一体構造包丁の「GLOBAL」はこのコンセプトで一気通貫されて作られている。だからGLOBAL包丁のデザインは、美しく、時代を超越している。このことは、明確なコンセプトをブレることなく成し遂げることで、上質なものを世に送ることができた成功例の一つと言える。

我が家では文化包丁とパン切りの二つを使用している。使い始めてからちょうど10年経つが、包丁の重要な機能である「切れ味」は衰えることなく、手に持った時の質感は料理をする楽しみをより豊かにしてくれる。

デザイナー
参考サイト
発売日
1983年

セブンチェア / アルネ・ヤコブセン | インダストリアルデザイン

セブンチェア ビーチナチュラル (jacobsen アルネ・ヤコブセン) セブンチェア ビーチナチュラル (jacobsen アルネ・ヤコブセン)

FRITZ HANSEN
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セブンチェアは、デンマークの建築家アルネ・ヤコブセンの代表作の一つで、アントチェア(アリンコチェア)の後継モデルとして作られた。製造元であるフリッツ・ハンセンの公式サイトで「セブンチェアは、フリッツ・ハンセンのコレクションにおいて最も幅広く展開されているチェアです。」とあるように、オフィスやレストランでも目することが多い。多くの人に親しまれているいるが故に、コピー製品も多いいけど、その多くが粗悪品で、一目で偽物とわかる。

定番色のブラック、ホワイト、ビーチの他にカラー展開もされており、レザーや毛皮などの素材を用いたものや、アームやキャスターが付いたものなどバリエーションも多い。筆者のリビングにはナチュラルビーチ色のセブンチェアが二脚あるが、それぞれ木目が異なり個性が感じられる。成型加工された合板の曲線は美しく、包み込まれるような座り心地も申し分ない。

デザインと機能性が見事にマッチし、完成度のきわめて高いセブンチェア。是非とも、本物を購入して、その品質を存分に味わってほしいと思う。

デザイナー
参考サイト
発売日
1955年

e-chair(イーチェア) / 佐々木 敏光 | インダストリアルデザイン

E-CHAIR ナチュラル E-CHAIR ナチュラル

SHIN 2009-05-15
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2005年56才で他界された佐々木敏光さんの代表作。イーチェアは2001年グッドデザイン賞を受賞しているが、それ以前に、天童木工からT-5623WB-ST キッズチェアとして販売されている。原型は、オランダ生まれのアーティストが孫のために書いてあげた絵本に刺激を受け、「自分も子供に何か作ってあげたい、せっかくなら複合機能を持たせたほうが楽しいだろう」との発想から誕生したらしい。

子どもの誕生にあわせて購入した椅子だけど、筆者も、今まさにこの椅子に座りながらキーボードを打っており、この椅子に座ることは多い。座り心地は勿論のこと、素材の質感もよく、たまに緩んだネジを締めたり、拭き掃除をしたりと手入れをするたびに愛着がわく。買った当初は木馬にしてみたりもしたが、子どもが大きくなった今、木馬にすることはなくなったものの、こうして幼い子どもから大人まで使える椅子として素晴らしいデザインである。この椅子が多くの人に長年親しまれていることを、座るたびに実感させられる。

筆者が購入した当時とは時代も変わり、現在のイーチェアはさらに進化し、佐々木デザインインターナショナル株式会社からNew BAMBINI(ニューバンビーニ)として展開されている。佐々木敏光さんがデザインしたこの椅子は、これからも末永く筆者のリビングに不可欠なアイテムになるだろう。

デザイナー
参考サイト

ルイス・ポールセン社 PH5 / ポール・へニングセン | インダストリアルデザイン

Louis Poulsen PH5 洋風ペンダント P3024W Louis Poulsen PH5 洋風ペンダント P3024W

Louis Poulsen
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このルイス・ポールセン社のPH5ランプは反射光を巧みに利用し、「暖かさと爽やかさを同時に醸しだす光」を演出してくれる。発売が1958年だから50年以上も生産されていて、多くの人々に愛され続けているロングセラーなペンダントライトの一つ。

このペンダントライトは、デンマークのデザイナー:ポール・ヘニングセンによってデザインされ、デンマークで生産されているけど、日本風の部屋にもマッチし、日本の空気に自然と溶け込む。間接照明の柔らかい光が、やさしく部屋全体を照らしてくれる。

らせん状のデザインは、飾って観賞するものいいけど、実用的でもある。この照明一つを灯し、晩酌をすると、一日を心地よく終えることができる。

デザイナー
参考サイト
発売日
1958年
カテゴリー: デザイン紹介 タグ:

ひたひた / 睡蓮 : 小松孝英 | ジャケットデザイン

ひたひた ひたひた
睡蓮

tearbridge 2008-06-18
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アルバムタイトルもアーティストのクレジットも印字されていないジャケットデザイン。小松孝英さんの原画を前面に打ち出そうとした意図もあると思われるが、あえて文字要素を入れ無いことに「空」の美学を感じる。

「空」という言葉を論じるときに、仏教の経典『般若心経』の一節「色即是空 空即是色」がよく引き合いに出されるが、この言葉に表されているように「無い」ことによって「在る」という因果を知らされる。そして、小松孝英さんの作品は「空」の思想によくマッチしている。

背景に敷き詰められた障子を連想させる格子状の模様は、前面に銀色のインクが用いられているが、その色は燻し銀のような趣で風情を感じる。この格子模様から垣間見られる水面には満月が映し出され、水辺の所々に生えている羊歯が、写実的に描かれた蝶に幻想的な雰囲気を与えている。水面に浮かぶ獣の白骨と水面に映し出されたように見える三重の輪で表された花びらのような模様は、何を意味しているのだろうか。

このアルバムのジャケットは四つ折り観音開きになっているけど、全て見開いて鑑賞することをお勧めしたい。

Cover Artwork
Photography
  • 北岡一浩
Hair&Make-up
  • 高橋カオリ(Cuna)
Design
  • 相川 志津和(avex marketing inc.)
Creative Coordination
  • 上田直樹(avex marketing inc.)
参考サイト
発表
2008年 6月18日

ウォールクロック / アルネ・ヤコブセン | インダストリアルデザイン

Arne Jacobsen アルネ・ヤコブセン バンカーズ・クロック(Φ290mm) Arne Jacobsen アルネ・ヤコブセン バンカーズ・クロック(Φ290mm)

Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
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デンマークの建築家、アルネ・ヤコブセンの遺作となった「デンマーク国立銀行」のためにデザインされた壁掛け時計で、1970年当時は照明で有名なルイス・ポールセンが製造していた。通称『バンカーズクロック』と言われ、現存数の少ないオリジナルを元に復元されている。

この時計には、時刻を表現する数字がない。その代わりに、黒色の細い罫線で描かれた12個の正方形を一条に連結し、この内の一つをずらして黒く塗り潰していくことにより、1から12の数を表している。こうして作られた12の規則正しい図形は、円形に配置されて、黒い正方形が渦を巻くようにして美しいグラフィカルな模様をなしている。

この時計の中央には、針を支える支柱が赤く彩色されてアクセントカラーの役割を担っている。ミニマムなデザインに加えて、この白黒赤の配色は、構成主義の影響が見られ、近代的なタイポグラフィーの基礎を築き、後のバウハウスにも影響を与えたエル・リシツキーのポスター『赤のくさびで白を打て』を思い起こさせる。

一週間に一分ほど遅れるこの時計。週に一度、時刻を合わせる時にそのフォルムの美しさを肌で感じさせてくれる。

デザイナー
カテゴリー: デザイン紹介 タグ: ,

あの頃、マリー・ローランサン / 加藤和彦 : 渡邊かをる | ジャケットデザイン

あの頃,マリーローランサン あの頃,マリーローランサン
加藤和彦

ソニーレコード 1991-05-15
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音楽やファッションの世界でニューウェイブがもてはやされていた時代に、このアルバムは発表されている。当時の肩肘張った大げさなスタイルとは裏腹に、身近でお洒落な作品をリリースした加藤和彦さんのセンスは見事だと思う。

僕の所有しているアナログレコードにはレコード盤と歌詞カードとは別に、ジャケットデザインに使用されている金子國義さんの油絵を用いたポストカードと、『ファンの皆様へ』と題された加藤和彦さんのメッセージカードが付けられている。このB5の用紙にこめられたメッセージの最後に「レコードはプライベートな楽しみだけに使ってください。音楽を愛するすべての人にお願いします。」という一文がある。良質な作品を創り出すためには、それなりの時間とお金がかかる。しかし、作品のクオリティとビジネスとは必ずしも比例しない。その上、この当時から顕著になってきた複製技術の進歩により、音楽を聴くスタイルが変化してきた。複製技術に加え、通信技術が進歩しインターネットが生活の一部となっている現在、今一度、クリエイティブな仕事の意味を考え、「クオリティ」というものが人々の生活に与える影響を見直す必要があると思う。

加藤和彦さんの海外録音3部作『パパ・ヘミングウェイ』、『うたかたのオペラ』、『ベル・エキセントリック』に続く、この『あの頃、マリー・ローランサン』というアルバムは、前作の『ベル・エキセントリック』同様、豪華な参加ミュージシャンに劣らずアートワークも豪華で、渡邊かをるさんのアートディレクションに、金子國義さんの絵画という顔ぶれ。加藤和彦さんの上質なものに対するコダワリを感じます。

明るく軽快な音楽にマッチしたオレンジ色が印象的なジャケットデザインとともに、同名の書籍『加藤和彦スタイルブック―あの頃、マリー・ローランサン』を読んで、生活を愉しみたいと思う。

Art Director
Designed by
painting by
参考サイト
発表
1983年

Inky Bloaters / Danielle Dax : Holly Warburton | ジャケットデザイン

Inky Bloaters Inky Bloaters
Danielle Dax

Biter of Thorpe 1993-11-18
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「Flashback」「Bad Miss ‘M’」「Big Hollow Man」「Fizzing Human-Bomb」など、ダニエル・ダックスの代表曲が収められていて、今でもよく針を落とすアルバム。

キャッチーなポップス、カントリー、シタールやカリンバを用いた民族音楽などワールドワイドな楽曲に相応しいカバー写真は、ホリー・ワーバートンによるもので、レイヤードを施して映画のワンシーンを抜き取ったようなイメージに仕上げる彼女の特徴的な作品である。この耽美的な作品には、ダニエル・ダックスのポートレートとユリの花、溶けて流れ落ちる金属のようなテクスチャなどが用いられていて、ダニエル・ダックスの美しく、そして時に醜悪で神秘的な歌声を表現している。

ダニエル・ダックスは彼女の作品が相当気に入っているらしくこの『Inky Bloaters』の他にも『Jesus Egg That Wept』『Dark Adapted Eye』などもホリー・ワーバートンの作品が採用されている。彼女の作品は、All About Eveのセカンドアルバム『Scarlet And Other Stories』黒百合姉妹の『最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶』でも見ることができる。

ウィキペディアではダニエル・ダックスがカバーアートワークを手がけていることになっているが、アナログ盤ジャケットには、エロティックで退廃的な映画を手がけるナイジェル・ウィングローブの名前がクレジットされている。

Design
Cover Photograph
参考サイト
発表
1987年

Filigree & Shadow / This Mortal Coil : 23 Envelope | ジャケットデザイン

Filigree and Shadow [12 inch Analog] Filigree and Shadow [12 inch Analog]

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シェイクスピア「ハムレット」の一節”What dreams may come, When we have shuffled off this mortal coil, Must give us pause” から名付けられたプロジェクト「This Mortal Coil」のセカンドアルバム。4ADレーベル初の二枚組みアルバムなだけに、ジャケットデザインも収められている音楽に劣らず素晴らしく美しい。

シルバーインクの上に写真を溶け込ませる技法は、アートワークを手掛けている23 Envelopeの得意技の一つで、Nigel Griersonの幻想的な写真にバランスよくマッチしている。ブラウンに近いエンジ色の差し色が、静かな動きを与える効果をなして、固体にも液体にも変わる金属の柔軟な性質を表しているかのようである。

インナースリーブに配置されているタイポグラフィーは、スクリプトフォントとサンセリフ体、セリフ体を用いて、このアルバムに収められた曲の静寂さと躍動感を視覚的に伝えてくれている。そのリズミカルなバランスも23 Envelopeの特徴の一つであるが、大文字と小文字の使い分けや級数のバランスは職人芸的な美しさがある。

今では、CDもリリースされているが、LPレコードとCDでは残念なことにジャケットデザインが異なる。そして、この作品は二枚組みアナログ版で聴くことを前提に構成されているので、是非、針を落として聴いて欲しい。

公式サイト
Sleeve
Photography
参考サイト
発表
1986年9月20日