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‘デザイン紹介’ カテゴリーのアーカイブ

out of noise / 坂本龍一 : 中島英樹 | ジャケットデザイン

out of noise(数量限定生産) out of noise(数量限定生産)
坂本龍一

commmons 2009-03-04
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中島英樹さんの作品に特徴的な余分な要素を削ぎ取ったミニマムな表紙。三つ縦に並べられたアルファベットの「O」の文字が、このシンプルなデザインに揺らぎのような小さな動きを与えている。ほぼ中央に配置された抽象絵画のような写真からは、ぼかされたフォーカスにより、DNA配列にみられるような秩序あるものの崩壊が感じとれる。

この作品は「フルアートワークCD」「パッケージレスCD」「アナログ・レコード」と三つの形態でリリースされている。その中でも「フルアートワークCD」版は、リパックトレイを使用し、DVDトールサイズの紙製パッケージに68ページにおよぶブックレットが収められている。ブックレットには、田島一成さんやラマ・リーさん、そして坂本龍一さんによる写真や北極でのネイザン・ギャラガーさんによるシューティングなど多数の写真が掲載され、曲の解説や参加アーティストの紹介など充実した内容が盛り込まれている。

ジャケットの裏面に記載されている「この商品は”カーボンオフセット”CDです。この商品が生産・流通・廃棄のプロセスで排出する/したと想定されるCO2(=1枚あたり0.87kg)は、moreTreesがフィリピン・キリノ州で取り組む植林プロジェクトによって相殺(オフセット)しています。また、日本国民1人当たりが1日に排出するCO2約6kg分全てをカーボンオフセットする費用が含まれています。」という文言は、地味ながらこの作品のコンセプトの一つを表している。

また、このアルバムは『Playing the Piano』というタイトルでセルフカバーを集めたCDとのカップリングでもリリースされており、そのジャケットデザインは『out of noise』の流れを汲んだものになっている。

世界各地で見られる戦争や紛争をはじめとした殺し合いや領土争い、共産主義諸国の崩壊やあてもなく彷徨う資本主義経済、人為的な放射能汚染など、世の中のことに対して思索を促してくれる一枚。

Creative direction
  • 空里香(そら のりか)
Art direction and Design

Design assistant
Ny studio photos
London session photos
Other photos
photos
参考サイト
発表
2009年3月4日

うつし絵 / 新垣結衣 : 藤城清治 | ジャケットデザイン

うつし絵(藤城清治氏デザイン・ジャケット完全生産限定盤) うつし絵(藤城清治氏デザイン・ジャケット完全生産限定盤)
新垣結衣

ワーナーミュージック・ジャパン 2009-05-27
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小学校の教科書でもおなじみ、影絵の巨匠・藤城清治さんが手がけたジャケット。原画は新垣さん描き下ろしのオリジナルイラストで、彼女が藤城さんの作品興味があり、このコラボレーションが実現したらしい。

藤城清治さんの影絵には子供から大人まで楽しめるメルヘンが満載で、この作品も「青く深い海の中に射しこむ透明な光と彼女のシルエットを重ねながら、ぼくなりに一生懸命つくった。」と藤城さんのコメントにもあるように、新垣さんの内面が海と太陽の光が織りなす幻想的な世界となって表れている。

昇仙峡の影絵の森 美術館を訪れると、そこでは光と影がぼくたちに至福をもたらし、ある種宗教的な世界へと誘ってくれる。この空間の中で感じることのできる法悦が、このジャケットアートにも感じられる。この作品はCDジャケットの中でも素晴らしく美しい。

影絵
藤城清治 – Wikipedia
原画
新垣結衣 – Wikipedia
参考サイト
うつし絵 (新垣結衣の曲) – Wikipedia
山梨県 昇仙峡 観光地昇仙峡影絵の森 美術館
発表
2009年5月27日

Body and Soul / Joe Jackson | ジャケットデザイン

ボディ・アンド・ソウル ボディ・アンド・ソウル
ジョー・ジャクソン

ユニバーサル インターナショナル 2006-12-20
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ソニー・ロリンズ『Sonny Rollins, Vol. 2』のパスティーシュであることはあまりにも有名。このことは鳥井賀句さんのライナーノーツにも「ジャズ・ミュージックに対してはそれほど深い知識は持っていない僕でも、」という前振りに続けて書かれている。

二つのアルバムを見比べてみればわかるが、ジョー・ジャクソンの『Body and Soul』は『Sonny Rollins, Vol. 2』に忠実に模倣している。収められいる音楽の傾向は違うけど、ここまで似せているのは、ソニー・ロリンズへのオマージュを表していると思えるほどである。もしかしたら、音楽性が違うからこそ、ジャケットデザインで敬意を表したのかもしれない。

『Body and Soul』を見て少し気になったのだけど、本家の『Sonny Rollins, Vol. 2』でソニー・ロリンズはタバコをくわえているが、『Body and Soul』でジョー・ジャクソンはタバコを口にしていない。社会・政治的な禁煙の動きに反対している彼のこの意外なポーズに、何か意味があるのだろうか。そんなことを思いながら、今でもよく聴いている一枚。

Photography
Charles Reilly
Layout
QUANTUM
参考サイト
Sonny Rollins, Vol. 2 – Wikipedia
参考サイト
Body and Soul (Joe Jackson album) – Wikipedia
Joe Jackson – Wikipedia
ジョー・ジャクソン – Wikipedia
発表
1984年3月14日

MINI ALBUM VOL.4 / BIGBANG : Seongeun Chang | ジャケットデザイン

MINI ALBUM VOL.4(YGファミリーカード付)/Bigbang(ビッグバン) MINI ALBUM VOL.4(YGファミリーカード付)/Bigbang(ビッグバン)
Bigbang(ビッグバン)

MNET Ent. 2011-02-25
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YGエンターテイメント所属のアートディレクター:チャン・ソンウンさんによるジャケットアート。『MdN (エムディーエヌ) 2011年 05月号』でも紹介されているように、彼の作品は目を引くものが多く、K-POP躍進の一躍を担っている。

豪華さやシンボル的なグラフィックであるドクロのコンセプトのディテールから言えば『BIGBANG Special Edition』の方が勝っているけど、このキラキラ具合がチャン・ソンウンさんらしくていい。黒と銀と白のシンプルな配色がシルバーの光沢を際立たせ、ドクロのイラストをより強調する役目を果たしている。水玉やボーダーなどのシンプルな幾何学模様を効果的に扱ったブックレットも印象的。そして、背表紙と反対側の側面につけられた四つのドットと「BIGBANG」のタブがさりげないお洒落感を演出している。

現在の低迷するCDの売り上げから言えば、ジャケットデザインに資金を投入できないと考えるのが正論だと思う。しかし、制作コストを下げるために、モチベーションの下がったスタッフや基礎の出来ていない未熟な制作者を起用して安価に物事を進め、クオリティの低い作品をリリースしていては、負のスパイラルに落ちていく一方だと思う。それなりの資金を投入して質のいいものを世に出すYGエンターテイメント社の姿勢に、日本の音楽業界も見習うべきものがあるのではなかろうか。

アートディレクション
Seongeun Chang(チャン・ソンウン)
参考サイト
BIGBANG – Wikipedia
YG Entertainment – BIGBANG
BIGBANG
発表
2011年2月25日

See Jungle! See Jungle! Go Join Your Gang, Yeah. City All Over! Go Ape Crazy / Bow Wow Wow : Andy Earl | ジャケット写真

ジャングルでファン・ファン・ファン+10 ジャングルでファン・ファン・ファン+10
バウ・ワウ・ワウ

SOLID / CHERRY RED 2010-07-21
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西洋絵画に興味のある人なら人目でわかる、フランス印象派の画家エドゥアール・マネの『草上の昼食』のパロディー。写真にある裸の女性は、このアルバムのバンド「バウ・ワウ・ワウ」のヴォーカリストのアナベラ・ルウィンで、当時15歳だった。そして、この写真を見たアナベラの母親が提訴し、発売延期にまで至ってしまった…。そんなこともあり、このジャケット・カバーには別ヴァージョンがある。

マネージャーのマルコム・マクラーレンが採った奇を狙った手法も注目に値するが、アンディ・アールの撮った写真も素晴らしい。このアルバムを語るとき、スキャンダラスな話題ばかりが取り上げられるが、緑の中で赤色をアクセントカラーにし、ヴィヴィアン・ウエストウッドの洋服を着た男たちに囲まれる裸の女性が絶妙なバランスで配置されている。このことも、もっと評価されていいのではなかろうか。

スキャンダラスなジャケット・カバーは他にも多々あるが、このアルバムの写真はその美しさによって、他では見られない素晴らしい出来となっている。また、収められている曲も、今聴いても新鮮で、アートワークと音楽と両面で完成度の高い作品として、ロック史上語り継がれて欲しいアルバムの一つである。

フォトグラフ
Andy Earl
参考サイト
BOW WOW WOW
Bow Wow Wow – Wikipedia
バウ・ワウ・ワウ – Wikipedia
発表
1981年10月

Maxinquaye / Tricky : Cally | ジャケットデザイン

Maxinquaye Maxinquaye
Tricky

Polygram Records 1995-04-18
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「TRICKY」の名前が四つに分断されたデザインが印象的なジャケットの『マクシンクェーイ』は、90年代のトリップ・ホップを代表するトリッキーのデビュー作。アルバムのタイトルは彼が4歳の時に自殺した母親の名である。

このアルバムのアートディレクションとデザインを手がけているCally(本名:Martin Callomon)は、Island Recordsのアートワーク部門Island Artに所属しているアートディレクタで、70年代にはThe bears、80年代にはThe tea setというパンクバンドのメンバーでもあった人物。Julian Copeのマネージメントもしている。

ダブの手法を大胆に取り入れたトリッキーの音楽と、彼の生い立ちを連想させる多くの写真と、Andy Earl、Paul Rider、Valerie Phillipsなど著名な写真家による彼のポートレートが入り交じったブックレットは、このアルバムに込められたメッセージをビジュアルで表現しているかのようである。「HELL IS ROUND THE CORNER 」地獄から逃れる逃亡者の物語が見えてくる、重いパンチを入れられた時に感じる痛みがいつまでも抜けないような一枚である。

アートディレクション、デザイン
Cally
フォトグラフ:Tricky Shoot
Andy Earl
Paul Rider
Valerie Phillips
フォトグラフ:Random Shots
Baron Von Callmeister
参考サイト
Maxinquaye – Wikipedia
トリッキー – Wikipedia
発表
1995年2月20日

太陽の塔 : 岡本太郎 | オブジェ

1/350スケール 太陽の塔 ソフトビニール製塗装済み完成モデル 1/350スケール 太陽の塔 ソフトビニール製塗装済み完成モデル

海洋堂 2010-09-13
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生誕100年ということで最近よく目にする岡本太郎の代表的な作品の一つ。

幼少の頃、万博記念公園でよく遊んでいたし、中学のころは陸上部員としてこの敷地内にある陸上競技場のトラックを走ったりと、この「太陽の塔」は筆者にとって身近な存在だった。そして、その巨大な芸術作品にはオーラがあり、言葉にできない力を与えてくれる神の様な特別な存在だった。小学生のとき、自転車で国鉄(現JR)茨木駅から万博公園を目指して大通りを走っているときも、この神様に会えることを楽しみにしながら自転車をこいだ。この巨大な神様を身近に置きたくて写生もした。こうしていつしか、油絵画家を目指していた筆者にとってこの作品は「芸術の神様」となっていた。芸術家になることを諦め、ジョルジュ・バタイユに関して研究していた学生時代でも、この神様(岡本太郎の思想)がバタイユの思想とオーバーラップしている姿を見ていた。今でもこの太陽の塔が筆者にとって「芸術の神様」であることは変わらない。大阪の天王寺で生まれ、乳飲み子として過ごした茨木の家は1970年に開催された日本万国博覧会の関連で立ち退きになっており、物心付く前からこの神様に影響を受けていたようである。

リーマンズショックや大震災で日本人のライフスタイルが大きく変わろうとしている。「太陽の塔」の根底にある岡本太郎の思想は、今の日本人が目指すべき指標を与えてくれている様な気がする。この生誕100年を機に、再考してみようと思った。

デザイン
岡本太郎 – Wikipedia
参考サイト
太陽の塔 – Wikipedia
発表
1970年3月15日

みんなで分け合えば、できること。 / Takamasa Matsumoto | ポスター

東北地方太平洋沖地震による買い占め防止ポスター

デザイン
Takamasa Matsumoto
発表
2011年3月16日
カテゴリー: デザイン紹介 タグ: ,

Ultra / Depeche Mode : Anton Corbijn | ジャケットデザイン

Ultra: Remastered/+DVD Ultra: Remastered/+DVD
Depeche Mode

Mute 2009-03-16
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メンバーの脱退やリード・ボーカルのデイヴ・ガーンの薬物過剰摂取と自殺未遂など、混迷していたデペッシュ・モードの復活を決定づけたアルバムで、セールス的にも大成功をおさめた名盤。「Barrel of a Gun」「Home」「It’s No Good」「Useless」など、後に彼らの代表曲となる曲が収められている。

このアルバムのジャケットデザインはU2やデビッド・ボウイなど数多くのミュージシャンを撮影しているロック写真家アントン・コービン。彼はデペッシュ・モードのステージングやビデオなどのアートワークも数多く手掛けている。アントンが手掛けた『ultra』のカバージャケットは闇の中から力強く吹き出そうなエネルギーを連想させる。粒子の粗い岩肌の様な空間に浮かぶ「ULTRA」の文字は、まるで宇宙と交信しているかのようである。デペッシュ・モードを甦らせた底無しの力はニューチェの「権力への意思」を彷彿とさせる。このアルバムに収められた曲やアートワークは、制作に携わったメンバーやスタッフの静かな情熱が感じられる。

筆者はフィレンチェのレコード屋で購入したLPレコードを持っているが、ジャケットの裏面はアントン撮影によるメンバー三人のポートレート写真がレイアウトされている。この写真はアントンのお気に入りの一枚らしく、彼のオフィシャルサイトでは、マラケシュでの撮影された様子が綴られている。

以下、アントンのサイトより
Marrakech, 1996
With DM I have done so many photographs it is hard to choose a particular one,
but this is probably my favourite. It was shot the day before we filmed the
‘ Barrel of a Gun ’ video and we had two hours to shoot press shots and things
I wanted to use for the ‘ Ultra ’ sleeve so pretty rushed really. I was using very
grainy film and I have started to shoot with that more recently-it is muted,
not so saturated in colours.

アートディレクション、フォトグラフ、ジャケットデザイン
Anton Corbijn
Anton Corbijn – Wikipedia
アントン・コービン – Wikipedia
スリーブ・デザイン
Richard Smith
Area
参考サイト
Ultra (album) – Wikipedia
Depeche Mode – Wikipedia
デペッシュ・モード – Wikipedia
発表
1997年4月14日

ゴールデン☆ベスト / 紅麗威甦 | ディスクデザイン

ゴールデン☆ベスト 紅麗威甦 ゴールデン☆ベスト 紅麗威甦
紅麗威甦 杉本哲太 桃太郎 LONELY-RIDERS

日本コロムビア 2011-01-19
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80年代に活躍したロックバンド「紅麗威甦」のシングルを集めたベスト盤。ジャケットデザインは収録されている曲のジャケットアートが整然と並べられているだけだが、それぞれのアートワークが個性的なので、このくらいシンプルなレイアウトでも悪くない。このアルバムで目を引いたのは、ジャケットではなく、中に納められているディスクのデザインである。

中心から半径3.5センチの円は、朱色の地に墨文字でアルバムタイトルとアーティス名などがレイアウトされている。残されたその周辺部は黒のベタ塗りだか、よく見ると同心円状に黒色で六本の罫線が二組計12本引かれている。そう、レコードを聴いていた人には懐かしい、ドーナツ盤をモチーフにしたデザインである。昔のレコードのようにA面B面と、表と裏がないことが残念だが、コンパクトディスクという規格上、仕方がない。

このディスクデザインを見て、レコードのA面B面には趣きがあったと再認識させられる。表の世界と裏の世界という、レコードには二面性がある。この物理的な違いを利用して、表と裏で異なるコンセプトにしたり、曲の構成に意味を持たせたりと、レコードには制限があるからこそ出来る遊びがあった。そして、裏返すという煩わしさがもたらしてくれる愛着も感じられた。

そんなことを思いながら、このCDを聴いた。同じ曲でもここから流れてくるシングル版とアルバム版では、アレンジが微妙に違う曲もある。DTMなど無かった時代のこだわりに感心させられた。

参考サイト
紅麗威甦 – Wikipedia
発表
2011年1月19日