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‘芸術論’ タグのついている投稿

黄色 YELLOW | カラー

黄色がコーポレートカラーだという依頼者から企業サイト制作の話をもらった。ただし、このコーポレートカラーである黄色は特定のトーンが決まっていない漠然とした「黄色」で、レモンイエロー、山吹色、ウコン色など具体的な色が決まっていない。それでは何故「黄色」かというと、依頼主のラッキーカラーだそうだ・・・。

こうして「黄色」と戯れることになった。

黄色は信号機の色の一つとしてなじみのある色であり、黒色との配色で警戒色として用いられていて、交通標識などでよく目にする色である。黄色は暗所でよく目立つ色なので、注意を喚起する色として用いられることから「注意」や「危険」を意味する心理的な側面を持っている。この例の一つとして、サッカー競技でのイエローカードがあげられる。また、黄色と音との間に明確な関係はないと思われるが、「黄色い声」という言葉はこの色のもつ心理的な意味を表現してる。また、19世紀のロシア人作曲家スクリャービンは、黄色を「レ」の音で表現している。

18世紀の文豪ゲーテの著書『色彩論』において、黄色は青色と共に基本色であり、この二色の「高進」によって色環が構成されている。ゲーテによれば、黄色はプラスの色で、「常に明るく、明朗快活で優しい。黄色は衣服、カーテン、壁紙などとして快適ある。純金の色は素晴らしく、絹地の黄色は華麗で高貴である。絵画においても黄色は明るい活動的な場面に用いられる。」とある。また、スイスの心理学者フィスターによる「カラー・ピラミッド・テスト」では黄色を「情動の安定と温和、適切な情動の表出」と解釈している。このような黄色の好感なイメージにより、コーポレートカラーとしても、カメラメーカーのニコンやドラッグストアーのマツモトキヨシなどの企業で採用されていて、親しみのある色の一つである。

先述のゲーテの論述には次のような続きがある。「ただしこのような黄色も、汚れには極めて敏感で、たちまち不快になる。栄誉と歓喜の色彩は、一瞬にして恥辱と嫌悪の色彩に変わってしまうであろう。」黄色の裏の顔ということなのだろうか。

参考サイト
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生誕100年 ジャクソン・ポロック展 ( #ポロック展) | 展覧会

ジャクソン・ポロックの生誕100年を記念して開催されるポロック展。

床に広げられたキャンバスに、棒やコテで塗料を滴らし、撒き散らす。ただペンキを無造作に撒いただけの絵を芸術と言えるのだろうか。ポロックの「アクション・ペインティング」をはじめ、このようなモダンアートに疑問を投げかけた美術評論家は多い。しかし、これは便器を置いただけの作品と同じく、芸術作品として多くの人々に親しまれ、僕たちに感動を与えてくれている。ポロックの回顧展を観ながら、久しぶりに、芸術のそのものに関して哲学的な考察をしてみたいと思う。

以下、公式サイトより抜粋

本展は、日本の美術界が長年にわたって待望しつつも、今日まで実現されずにきたポロックの日本初となる回顧展です。
現在、日本国内に所蔵されている約30点のポロック作品すべてが一堂に会します。

公式サイト
生誕100年 ジャクソン・ポロック展
会場
東京国立近代美術館
会期
2012年2月10日日(金)~2012年5月6日(日)
休館日
毎週月曜日(2012年3月19日、3月26日、4月2日、4月30日は開館)
開館時間
午前10時~午後5時(金曜日は午後8時まで)
※入館は閉館時刻の30分前まで
観覧料
  • 一般=1,500円(1,300円/1,200円)
  • 大学生=1,200円(1,000円/900円)
  • 高校生=800円(600円/500円)
  • 中学生以下無料

※カッコ内は、2011年12月10日(土)~2月9日(木)までの前売り/20人以上の団体料金
※2~4月の日曜日と祝日(2月11日(土)、3月20日(火)、4月30日(月))は、高校生の観覧料が無料
※障害者手帳をお持ちの方と付添者1名は無料

参考サイト

岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ) | 芸術

岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ) 岡本太郎新世紀 (別冊太陽 日本のこころ)
別冊太陽編集部

平凡社 2011-02-23
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「アバンギャルド」「対極主義」「日本の伝統」など、岡本太郎のエスプリがほどよく凝縮されている。書名『岡本太郎新世紀』からも伺われるが、彼のアバンギャルド芸術に対する取り組みは、21世紀の芸術の方向性を示唆しているように思われる。

本書に掲載されている人類学者の中沢新一の『超核の神話』は、東日本大震災で崩れた「原子力発電の安全神話」を乗り越えるうえで、参考になるのではなかろうか。その中でも「私たちは、芸術によって、核というものを越えていくことができるのではないか。技術と芸術が大きく分かれていく分岐点に立ちもどって、科学技術がつくりだすものを包摂し乗り越えていくことが、芸術の力で可能なのではないか。これは賭けです。これからの芸術が勝利するかどうかは、わかりません。しかし、できるかもしれない。いや、勝利できると、岡本太郎はこの作品で言いたかったのだと思います。ですから、『明日の神話』は、「超核」の神話です。」というくだりは興味深い。人類はこれまでの価値観を転換させて、これまでとは違ったライフスタイルを見つけなければ「肉体は吹き飛んで、生命は消えてしまう」だろう。

ジョルジュ・バタイユの『エロスの涙』に書評を寄稿していることを本書で初めて知った。豊富な美しい図版だけでも楽しめる。この一冊で岡本太郎の魅力を堪能できる良書。

出版社
平凡社
参考サイト
中沢新一 – Wikipedia
発売日
2011年2月23日

芸術新潮 2011年 03月号 | 芸術

芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌] 芸術新潮 2011年 03月号 [雑誌]

新潮社 2011-02-25
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生誕100年ということで購入した岡本太郎の特集誌。この雑誌の表紙には「岡本太郎を知るための100のQ&A」とある。100の問いに答えているのは岡本太郎の秘書で、後に養女となる平野敏子の甥にあたる平野暁臣、美術手帳で『後美術論』を書いていた椹木野衣、東京国立近代美術館主任研究員の大谷省吾、以上三氏である。

平野氏の言及は彼の伯母が岡本太郎の秘書であり養女であったこともあってか、プライベートなことも随所にみられて興味深い。「酒には義理がある」という太郎の言葉やお茶目な彼の性格など、岡本太郎の人柄を知ることができる。

三氏とも岡本太郎の作品にみられるジョルジュ・バタイユの影響を語っていて、そのどれもが的をえているように思える。椹木氏も述べているように《夜》や《電撃》はおそらくバタイユの思想を念頭に入れて描かれている。また、三氏とも触れていないが、太郎の「ノン」という言葉にはバタイユの「非-知(le non-savoir)」を連想させるものがある。

この特集に「影響を受けた画家はいますか?」という問いがあり、そこにはセザンヌ、ピカソ、ダリの名があがっている。そして、その影響が作品のスタイルではなく、創造の精神やメディアを通じて芸術家としてのイメージを露出していく手法であると述べられている。岡本太郎の作品を見ると、その作品の中のパーツ、特に揺らめく光みたいな呪術的な要素の色や形にはアンドレ・マッソンの影響が見られる。

アンドレ・マッソンはエロティックな作品を多く残しているし、岡本太郎が「乗り越える」と意識してたピカソにも多くのエロティックな作品がある。ピカソの一見何でもない闘牛の絵の牛には勃起した男根が描かれている。太郎が好きだった祭りはエロティックな本来イベントだし、バタイユに強い影響を受けているわりには、太郎には、エロティックな作品が少ないように思われる。もしかしたら、それらの絵は意図的に隠されていいるのかもしれない。その真相はわからないが、岡本太郎のエロティックな作品の少なさが、彼とバタイユとの繋がりを客観的に希薄にし、二人の関係があまりクローズアップされない要因の一つになっていると思う。もちろん、バタイユの秘密結社について具体的な資料が乏しいことが、このことに大きな影響を及ぼしているのだけど。

岡本太郎にエロティックな作品が少ないのは、少ないのではなく、今、目にしている彼の作品の多くが、見る人は意識していないが、または意識されることなく、エロティックな要素を含んでいるからなのだろうか。岡本太郎自身、そのことを意識し、計算して描いていたとも考えられる。そうなると、今度は、太郎の作品のほとんどがエロティックな作品ということになる。いずれにせよ、確証もなく創造の域を越えるものではない。この問いの答えは・・・。

出版社
新潮社
参考サイト
平野暁臣 – Wikipedia
参考サイト
André Masson – Wikipedia
発売日
2011年2月25日

美術手帖 2011年 03月号 | 芸術

美術手帖 2011年 03月号 [雑誌] 美術手帖 2011年 03月号 [雑誌]

美術出版社 2011-02-17
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岡本太郎:生誕100年記念特集ということで購入してみた。表紙には「明日のTAROへ名乗りを上げろ!!太郎に出会うキーワード&ガイドマップ」とあり、早速「岡本太郎ガイド&マップ」のページをめくった。

身近なところに岡本太郎の作品があったり、日本各地に彼のオブジェや絵画があったりと、このマップを見ていると岡本太郎の作品めぐりをしに足を運びたくなる。また、グッズガイドで岡本太郎の家具があることを知り、欲しい椅子があったけど、値段をみて…

こうしてページをめくっていくと「LAIBACH」のアートワークに目がとまった。おそらく、ロックが好きな人でも知る人は少ないこのバンド。何故この紙面で取り上げられているのだろうか。そんな興味をもち椹木野衣さんの『後美術論』を読んでみた。視点を変えてみると、ライバッハの活動とU2の「ZOO TV」とがこんな形で見えることに関心し、昨年がライバッハの活動30周年だったことをあらためて知らされた。

久しぶりにライバッハとU2の音源をスピーカーから流した。そして、椹木さんの著述を思い起こしながら、インターネット社会の中での芸術のあり方や活動の仕方について考えさせられた。

出版社
美術出版社
参考サイト
椹木野衣 – Wikipedia
発売日
2011年2月17日
カテゴリー: 書籍紹介 タグ: , ,

エロスの涙 : ジョルジュ・バタイユ | 芸術論

芸術とエロティシズムを語る上で、そしてクリエイティブとは何かを語る上で、欠かすことのできない重要な著作。

バタイユの作品を読み漁っていた1980年代には現代思潮社から1964年に刊行されたものしかなく、当時はCity Lightsから出ていた英訳本を辞書を片手に読んでいた。その後1995年に、トレヴィルから日本語訳(翻訳:樋口裕一)され、感無量の思いで予約購入した。そのような入手困難だったこの本が文庫本で出版されるなど、その当時は思ってもみなかった。

このバタイユの遺作は、彼のこれまでのエロティシズムに関する思想を集約したもので新鮮味に欠けるが、難解と言われる彼の書物としては読みやすく、図版が多く親しみやすい。ただ、そこに収められているグロテスクな幾つかの写真は、見るに堪えないものがある。そのうちの一枚、清朝中国の残虐な刑罰の写真は、アメリカのサックス奏者ジョン・ゾーンのアルバム『凌遅 LENG TCH’E』のジャケットカバーに採用されていて、バタイユの多方面にわたる影響力をうかがわせる。

先史時代から現代、ヨーロッパからアジアまで、縦横無尽に芸術とエロティシズムとについて語られているこの書物は、人間の創造力の源である「生」と「死」が数々の芸術と共演し作り上げられた奇跡的な一冊である。

エロスの涙 (ちくま学芸文庫) エロスの涙 (ちくま学芸文庫)
Georges Bataille

筑摩書房 2001-04
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公式サイト
筑摩書房 エロスの涙
著者
ジョルジュ・バタイユ
翻訳
森本 和夫
出版社
筑摩書房
発売日
2001年4月
カテゴリー: 書籍紹介 タグ:

ラスコーの壁画 : ジョルジュ・バタイユ | 芸術論

美術の教科書にも掲載されてる、有名なラスコー壁画。彼はこの著作の中でラスコ-の壁画を労働という有用な活動と結び付いた芸術の誕生の証拠として取り上げ、これらの絵の中に「動物たちを愛しながら、殺した」という先史人たちの心理を、彼独自の思想で展開している。

遊びと労働、その間に挟まれている芸術…という議論はバタイユにまかせるとして、グラフィック・デザインの役割であるヴィジュアル・コミュニケーションの視点から、この壁画を見ると面白いと思う。アンリ・ブルイユ神父みたいに「この壁画が呪術的意図(有益な活動としての芸術活動)を表わしている」としても、バタイユの言うように「ラスコ-の壁画を遊びの証拠」と見るとしても、先史人たちはヴィジュアル表現で視覚伝達していたことには変わりない。

経済や政治、教育が大きく変わろうとしている2010年。デザインやアートを社会の中でどうかかわらせていくか。、ビジュアルコミュニケーションの原点を見詰め直すうえで重要な一冊。

ラスコーの壁画 (ジョルジュ・バタイユ著作集) ラスコーの壁画 (ジョルジュ・バタイユ著作集)
出口 裕弘

二見書房 1975-01
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公式サイト
ジョルジュ・バタイユ著作集 ラスコーの壁画
著者
ジョルジュ・バタイユ
翻訳
出口 裕弘
出版社
二見書房
発売日
1975年1月